あの日河野・四方谷両姫からのオファー…坂本様の姫衣装の貸し出しと言う出来事は、まさに降って湧いた幸福・はたまた棚から牡丹餅とはこの事を言うのだろうか?







舞 い 降 り た 幸 福



けして信心深くは無けれど、案外神様というのは粋な事をしてくれるらしい。

だってそうだろ?

思ってもみなかった、坂本様の姫衣装の着手だなんて。



正直に有定あたりがドッキリとかたちの悪い冗談かと思ったぐらいだ。

某首相のサプライズ人事並に驚く出来事。



でも河野・四方谷両名からの依頼だったから、ドッキリと言う事はまず無のだろうけど。



それでも正直信じられないと言う気持ちは大きくて、俺は驚きと困惑を隠し切れなかった。



「良いの?本当に?」



って言って数十回も聞き返して、我ながら少し情けない感じがする。



聞かれた河野・四方谷両名は初めは笑顔で「はい。是非先輩にお願いしたいんです」と言っていたけど、途中から不機嫌そうな表情で繰り返していた。



今思うと、かなりしつこかったとちょっぴり反省。

まぁ過ぎた事だから仕方が無けどね。



ともあれ、坂本様の衣装の着手は事実な訳で、俺にとってなかなかやり甲斐のある仕事になりそうだ。

まぁ後残念とすれば、折角のチャンスなのに坂本様の衣装は新作じゃないって事かな。



別に時間は云々の問題じゃなくて、気を遣わせない為の配慮らしく新作を断られてしまったんだよ。

夜なべだろうが徹夜だろうがお構い無しに作れるから、俺としては作りたかったんだけどね。



まぁ相手は奥ゆかしい方で、坂本様らしいと言えばそうなんだけど、作り手として本当に残念でならない。

だってさ坂本様っていう存在は中々イマジネーションを擽る存在なんだよ。

表立ってのきらびやかさでは無く、内から滲み出る綺麗さ優しさが感じる今時珍しい存在。



完全な出来上がった表現者とは異なる、想像力をかきたたせる存在なんだよね。

だからかな、もしかして坂本様に姫衣装ならどうとか想像したりもした事もあったんだよね。



てな訳で、柔らかい色味を思う存分に使う服とか実は結構考えていたんだけど、まぁ携われるだけでも良としなくては、罰が当たると言うものだろう。



他にも衣装に携わる人間の中で俺を選んでくれただけ有り難い事なのかな?



それこそ人にいわせるならば棚から牡丹餅と言う状況なのだろう。

何せあの有定を無視して…話が回ってくるぐらいだから。



「まぁ兎も角、坂本様に喜んで貰えるように頑張るって言うのが俺の勤めかね」



誰に言うわけでも無く、俺はそう呟き坂本様が着るであろう服の直しに着手したのだった。





おわし



2006.4.5. From:Koumi Sunohara


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★後書き+言い訳★
web拍手にて2006.3.1掲載作品です。
初の名田庄先輩の小話です。
如何だったでしょうか?最近有定会長ばかりでしたので生き抜きもかねて。
キャラが掴めないまま終わりましたが…少しの娯楽になったのであれば幸いです。