紅 雨 の 後 に
−寂しさの後の優しさ−




冷たく身に刺さる北風から、柔らかで暖かな心地よい風に変わる頃…。
木々は新緑の優しい色と…ほんのり紅の掛かった桜の花が満開に咲き誇っていた。

フワリと風が吹けば、花はハラリハラリ舞う。
その中を歩けば、まるで花の雨が自身に降り注いだかのような錯覚さえ覚える。

この花を愛でながら、酒やら食べ物を摘みに花見をする大人の気持ちも分からないでもない。
見事に咲き誇る、薄紅の花は儚いものだけれど美しい。

(花も色々あるんだけど…何だかこの桜がお気に入りだったりするんだよね。周りからはよく薔薇とかに例えられるけど…俺はそんな大味な花より…好きなんだよね)

まぁ儚いからこそ…より一層美しくみえるのかもしれないが…。
コノ日本の花が好きなのは、そんな儚さと華々しさがある所為かもしれないと思う。
他の花の最後とは違う、散り際までの美しさに惹かれるのかもしれない。

自分の性分から言えば、違う花が当てはまる。
誰かは薔薇の花と言うかもしれないし…もしかしたら毒のある鳥兜だと言うものも居るかもね。

だけどさ、乱れ咲き…あっという間に消え去る美は圧巻。
引き際のよさ、咲き誇る大胆さ…はある種の強さを抱かせるのだ。

後ろを振り向くくらいなら、全速力で駆けめぐる方が良い。
常に動き続ける…常に策謀を巡らせる。
そんな所が自分と似ていると感じてしまうのだろうけれどね。

パワーゲームは好きだ。
挑むべきもが大きければ大きいほど燃えるのも事実。

だけど不意にホットする場所が欲しくなるのも事実。
自分についきてくれる連中も居るし、気も合う。
別に不快も満足していない訳ではないけれど、それでも欲しいと思う。

(我が儘だからね俺ってさ)

“フーッ”と溜め息を一つ吐いて俺は桜の樹を見上げる。

(もうすぐ葉桜になるね)

それでも桜は葉桜となっても、柔らかな緑を芽吹いている。
優しい優しい新緑の色。

「何時か…走り続ける中で…寂しさの後に訪れるあの穏やかさが俺にも訪れるのかな?」

ハラリと舞う桜の一片を捕らえながら、俺は誰に言う訳でも無くそう呟いた。
満開に咲き誇る、薄紅の淡雪の下でらしくない想いに浸りながら。



おわし

2006.1.26. From:Koumi Sunohara


★後書き+言い訳★
web拍手2005.11.15掲載作品。
有定会長が会長になってのはじめて春って所でしょうか。
さてはて、有定会長にとっての穏やかなモノとは…その辺はご想像にお任せします。
ともあれ、お楽しみ頂けたなら幸いです。


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