ハプニング
−嵐は突然湧いて出る−


俺は平凡…凡人…一般人代表じゃないかって言うぐらい平凡だ。
家族はかなり華やかだけど。
俺は至って何処にでも居る…本当に平凡でありふれた人間なんだ。

ただ春兄が宗教の教祖の様に奉りあげられてるとかで…ちょっと特殊な環境の中に居るってだけ。
要するに親の七光りならぬ…兄の七光り。
俺自身はまったく、興味の対象では無い。

それを差し引けば確実に俺は誰かに注目を受けたりする人間では無いんだと、俺は思っている。
と言うか事実そうなんだけど…。

(なのに…何故かな…この状況って…)

重い溜め息も吐きたくなる様な、ピリピリとした空気。
兄がそうであったように…壁を隔たらせた様な線を引いたような状態。

(可笑しい…俺何かしただろうか?)

不意に起きた出来事に俺は確実に戸惑いを覚えた。
だって、入学当初は兄と混同され…羨望を失望の瞬間を目の当たりにして、俺は俺であり…兄は兄って皆一様に納得した筈なのだ。
それが、気が付けば俺は坂本様にされていた。

上級生に習うように二年、一年もそれに習う。何とも言えない俺にとっての悪循環。
はじめは遊び半分かと思ったが、何だか日に日に浸透している。
流石の俺も少しまいってきたんだ。

それで…委員会の関係で、よく顔を合わせる有定会長に疑問をぶつけてみることにした。




「あの…何で皆さん俺に様付けで呼ぶんでしょうか?」

怖ず怖ずと唯一まともに取り合ってくれそうな、有定会長に尋ねれば…彼は人の良さそうな笑顔を俺に向けてきた。

「何か問題でもありましたか?」

「いえ…これといった問題は無いのですが…。ただ俺は様付けされるような人物じゃ無いです…兄とは全然似てませんから」

苦笑混じりにそう言えば、会長は少し考えるような仕草をとってから言葉を紡ぎ出した。

「先代は…色々な意味で特殊な方でしたからね。ですが…」

思い描くようにそう言葉を口にしてから、会長は一旦言葉を切って俺の方をジーッと見つめた。
俺もソレに習うように会長を見返す。
すると…。

「坂本様も…様付けで呼ばれるに十分な要素をお持ちだからだと思いますよ」

ニッコリと有無を言わせない微笑みを浮かべて言い切る会長に俺はすかさず言葉を紡いだ。

「いえ…俺は本当に平凡ですから」

やんわりと…それでも言い切る俺に、会長は少しだけ困った表情を浮かべて俺を見た。

「まぁ…悪戯半分な様付けならば…すぐに引くでしょうし。ひとまず現状観察と言うことで手を打ちませんか?」

そう笑顔で言う会長の顔が、新聞勧誘の文句のようで…何だか嫌な予感がしたが…俺は取りあえず頷く事しか出来なかった。
この選択が、今後も俺を悩ませる種になるなんてこの時の俺は全然考えていなかったんだ。


おわし


2005.6.16. From:Koumi Sunohara



★後書き+言い訳★
プリンセス・プリンセス小話です。
読んで下さった方が楽しんで頂けたら幸いです。
ちなみにweb拍手で2005.5.19.から公開していたモノです。


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