豆撒き成らぬチョコ撒き  

角砂糖に群がる蟻の様に

チョコに群がる男子生徒

有る意味健全

けれど撒いているのは…

藤森が誇る姫君達

そう彼らは男の子だったのです


1月上旬−

有定政権から坂本治世に移り…最終学期事三学期が、滞り無くスタートした某日の事。
藤森生徒会室に多くの嘆願書が届いた。


−恵まれない野郎どもに愛の手を−

−姫からのチョコを是非−

−出来れば坂本様の姫姿をもう1度−


などと言う嘆願書が連日の様に、生徒会室に届いた。
1月上旬と言うこともあり、きたる2月14日のヴァレンタインに向けた嘆願書は後を絶たない。

けれど、坂本様コト坂本秋良がこの事を知るのは少し後の事であった。何故なら、彼の片腕と呼ぶべき御鷹が秋良の手に渡る前に握り潰していたりしてたからに他ならない。
何故…御鷹がその様な暴挙に出たかは、口を閉ざす彼以外に知る由は無いが…ともあれ、嘆願書は晴れて秋良に届く事となった。

と…いうわけで、生徒会室−

「え…っと。まず統威、何でこの嘆願書を隠してたのかな?」

多く積まれた嘆願書の山に秋良は、若干困惑気味に御鷹を見て言葉を紡いだ。
やんわりと言われる口調に、御鷹は少しばつ悪そうに顔を顰めてすぐに言葉を紡ぐ。

「新体制で忙しい時期に、くだらない嘆願書で秋良をわずらわせる必要性を感じなかったからだ」

さも当然と言う様に紡がれる言葉に、3人の姫君達は(面倒くさいからだな)と内心思った。

「そうかもしれないけれど、皆一生懸命に書いた嘆願書なんだよ。必要か不必要かじゃないと俺は思うのだけど?」

少し考えてから紡ぐ秋良に、一同は流石秋良だと感心した。
そんな秋良に珍しく御鷹は食い下がるように言葉を紡ぐ。

「貰えなかった時に救済と言う形では無い、他力本願ぶりがどうかと思う。欲しければ欲しいとハッキリ言えば良い…生徒会に泣きつく事が可笑しいくは無いか?」

少し不機嫌そうに紡ぎながら最後は小さく「俺はちゃんと秋良に言うが」と呟きながら。

「珍しくその意見には俺も賛成だ」

「俺も。そもそも、他の学校の奴らだって貰えない奴居るのに、ここだけは可笑しい」

「うん。そうだよな可笑しい」

御鷹の言葉に、姫三人は珍しく賛同の言葉を紡ぐ。

生徒会室はわいわいがやがや。
流石の坂本も如何なものかと、思案していると、扇子の閉める音が凛と響く。

「はいはい。とりあえずストップして貰える?」

ニッコリと有無も言わずに、有定が不意に言葉を挟む。

「チョコぐらい良いだろ?そもそも丸得チョコレートだろうが、節分で残った落花生だろうが…彼らは姫からもらえる事に意義を感じているんだよ坂本様」

扇子で口元を隠しながら、楽しげに笑う有定に秋良は困った表情で有定に尋ねる。

「要するにヴァレンタインのチョコが欲しい…豆まきの要領だろうと…姫から欲しいと言う事なんでしょうか?そして何故か俺からも?と言う事なんでしょうか有定会長」

「もう俺は会長じゃ無いですよ坂・本・会・長。なので修也と呼んでくださいと言ったでしょ?」

笑顔だが、有無も言わせぬ微笑を浮かべ元生徒会長にして姫であった有定はそう口にした。
その何とも言えないオーラに秋良は少したじろぎながら、「修也先輩」と律儀に返した。

「そう言う事になりますね、有ってますよ坂本会長。ちなみに生徒諸君は坂本会長としてでは無く…姫姿の貴方からのチョコを熱望してますけどね」

「はぁ…亨や裕次郎それに実琴君は兎も角。俺みたいな奴の姫姿はいかがなものかと」

唸りながら言う秋良に「「そんな事無いから。秋良は普通に姫でいけるから!」」と言う言葉が間髪入れずに入る。

「何だかね…これは喜んで良い日なのかな?」

「喜んで良いですよ。まぁ坂本様は奥ゆかしいですからね。それではシャイな坂本様の為に僭越ながら俺が一肌脱ぎましょうかね」

ニッと悪戯な笑みを浮かべた有定が、そう言葉で締めくくった。
その姿は会長職を引いても尚、楽しげだったのは言うまでもない。


後日−
秋良の恥ずかしいと言う理由と御鷹の「秋良に何かあったらどうするんだ!」と言う尋常じゃない心配性のお陰で、一足早い藤森のバレンタインデーは屋上から姫達のチョコ撒きと相成ったのである。勿論坂本も姫姿で、チョコを撒いた。
学生達が少しだけ気を落ちしたのは、言うまでもない話である。

おわし

2008.4.3.From:Koumi Sunohara
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