降り注ぐ木漏れ日

−君という栄養剤−



木々に栄養を与えなければ育たない

全ての存在は何かを与えられて生きてゆく

人も…木々も…動物も…

故に潤い…栄養…与えられる何かは必要なんだ。

まるで優しく降り注ぐ木漏れ日の様に…。



転校してきた俺にとっては、意味不明なことだったけれど…姫というモノは必要不可欠らしい。姫をやっている現在…別に俺に対する潤いは無いけれど…周りは必要なんだそうだ。

藤森の姫制度は藤森の生徒なら誰でも知っている。
学校生活において潤いを与える存在…言うならば栄養剤なんだそうだ。

現に藤森に入る前の俺は、この学校にそんな制度が設けられていることなど知るはずも無いし、姫に成るだなんて思っても見なかった。
寧ろ姫になりに入る奴は居ないし…普通はそんな事なんて思ったりしない。

(ノーマルな健全な男子高校生たるもの、そんなんで良いわけが無いんだけど…実際はちがうようで頭が病む)

だってそうだろう?生まれて人生歩んでいても、多少なりとも彼女が居たり好意を持ってくれた子達は居た…居たけど…それは異性であって同性では無い。

(同性からそんな目で見られるなど、アウトオブ眼中だったよ…真面目に)

なのに俺は姫って存在に抜擢され、女優バリに笑顔を振りまき生徒に潤いを与える存在。
笑いたくなくても微笑んで、皆に幻想という偽りの夢を振りまくのが仕事。
まるで着ぐるみを着たヒーローを演じる様に俺は姫の仕事をこなす。

(しかもイメージ崩しちゃいけないから…朝飯はパン食だし…正直お腹がすくわけ)

まぁ…それもコレもお小遣いやら…オプションに釣られたと言うことと…叔父さん達への負担を少しでも軽くしたいって言う気持も有ってのことで…。
自分で決めた道なんだけどさ。

でもさ…俺や裕次郎が周りに潤いを与えている訳だけど…。
俺らの潤いって何処?確かにお小遣いやらオプションは有るけど割に合わない。

何て言うんだろう…与えて…補うより…出て行く指数が上回ってるって感じだ。
払っても払っても終わらない住宅ローンの様に、出て行く一方のパワー。

(実に不毛だよな〜。別に俺は姫だから…他の姫から潤いを貰うって言うより…同情やらお疲れって気持が先行するんだし…本当に不毛だ)

そう感じる俺に…救いの手はすぐ側にあった。
坂本秋良という…救いの手だ。

普通に接してくれる坂本の気安さと、ありふれた優しさが今の俺を支えてくれていると思う。裕次郎だって、最近坂本と話すようになって…砕けてきたように思う。

そう思うと…少しだけ他の連中の気持ちも分からないでは無い。
何せ俺は坂本から栄養を分けて貰っているのだから。

だが…。

(坂本の栄養は何処から来るのだろう?)

不意に感じる思い。
姫の癒しなど…坂本にとって意味がないものかもしれない。
常に学校中に気を配られてる坂本にとって、姫の笑顔なんて意味が無い気がする。

(少しでも…坂本の為になることって無いのかな?)

ぼんやり考える。

様付けなどいらないと言う坂本の言葉を思いだす。

(俺が俺であり。坂本にたいしてもいつもの俺で居ることが一番なのかな)

俺は少なくとも、壁など作らない。
それぐらいしか…今のところ思いつかないから。

俺は…俺達だけは…せめて様と言うフィルター抜きの坂本秋良と向き合う。
俺に栄養をくれる優しい木漏れ日に…少しでも…笑っていて欲しいから。


おわし

2006.7.27. From:Koumi Sunohara


★後書きという名の言い訳★
夏風10のお題で、プリプリ駄文。
時間軸としては、坂本様を名前呼びする前ぐらいって所です。
初の亨君小話。
しかし、坂本様の栄養は一体何処から補給してるんだろうか?


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