花 ご こ ろ |
−移ろいやすい人の心情− |
生徒会の仕事は滞る事無くスムーズだ。
生徒会選挙にも、坂本様を引っ張り出すことに成功したし…俺にとっては予定通り。
だが…世の中なかなか思うように進まないのも常で…坂本様コト坂本秋良君にライバルが現れたのは、ほんの数日前。無風選挙が…嵐が起きそうな選挙に変わったのだ。
ちなみにそれらの事を公になる前に、先に坂本様達に情報を流したのはつい先程。
坂本様の側にいた姫達は憤慨して、色々俺に言ってきた事など一人劇場で再現できるほど鮮明に感じる。
だが今はそんな騒然とした事はなく…此処は至って静かだ。
今は閉じられている、生徒会室のドアを眺めながら、俺は苦笑を浮かべる。
(無風選挙じゃ面白くないだろう?か…よくもまぁ言ったもんだな俺も)
先…坂本様を交えて会話した内容を思い出して、俺はそう心の中で呟いた。
何故なら、俺は何が起きても坂本様が会長になると確信してるからだ。
(何て言うかね…御鷹君には悪いけど…さ)
帰国子女の御鷹を見ても、悪いが俺は何も感じない。ただ威圧感…見てくれの良さ…カリスマに似た統率力…それは有るとは思うが…。
坂本様に感じる、期待とか…居心地の良さとか…内面から語りかけてくる様子も微塵に感じない。
(だが他はどうだろうか?)
不意に感じたそんな疑問…俺は他の人間に試したくて仕方が無くなったのだ。
我ながら俺は…悪趣味な性格をしている。
藤森の生徒を試しているんだから。
ソレに伴い…坂本様が心を寄せる姫二人も試していると言っても良い。
まぁ姫二人…亨姫と裕姫は心動かされることなく坂本様一筋だろうけど…試すにこしたことは無いと思う。
それにだ…面白いように移ろいで行く人の心が有るからこそ、見てみたいと切に思う。
強いインパクト…見るからのカリスマ性…人はソレに断然弱い。
先代の坂本様の時が良い例であり、姫制度そのものが…象徴と言っても良い。
それは一種の本能だから気にする必要は無いのだが。
言うなれば絶対的な事など無いと言うことの裏付けなんだと思う。
一枚岩だったチームが些細な事で壊れたり…張りぼての兵隊に怯える様に…アイドルの見た目にだまされるように。
だから試してみたいと思った。それが正直な俺の欲求だ。
まぁ…坂本様が坂本様になった要因は自分に有ると言うのもあるしね。
気がつけば、彼は一般の生徒から二代目の坂本様になった…その要因は自分が仕掛けた事だから。
(それ故に俺は、試したい。真に坂本様を認めている人間がどれほどなのかを…)
そう言う気持が強く、無風だった選挙にスパイスを投じた自分。
恐らく、あの坂本様の友人の姫二人は大憤慨だろうけど、俺に後悔は無い。
(本当は…俺が彼の価値を知っていれば良いと思っているのが実のところなんだけどね)
何てこっそり思いながら、俺は生徒会室の窓から外を眺めた。
「さてさて…いったいどの位の人間が…真の価値に気がつくんだろうね」
俺は遠目に映る坂本様と姫達の姿を目にとめながらそんな風に呟いた。
おわし
2005.10.21. From:Koumi Sunohara
★後書き+言い訳★ 花華10のお題より。 プリプリ小話で…選挙戦時の有定会長の心の内を書いてみました。 何となく私の中の有定会長は、こんな感じだったりします。 兎も角こんなお話ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 ちなみにweb拍手にて2005.9.26.掲載していたものです。 |
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