初雪  


ふわふわ舞う白い花。
触れれば形が消える儚き様は、儚いからこその美しさがあるのだろう。
雪国に生まれないものは、この白い雪の花を焦がれる。
淡い刹那的な触れれば溶ける雪の花を…。

冬を向かえ、クリスマスもお正月も過ぎた頃にも珍しく今年は初雪が観測されていない珍しい年だった。
大抵、この頃になれば一度でも雪が降る事が多い例年だったが、今年は珍しい。

芝生に霜が下りる光景は見るが、霙は降っても雪にはならない。
気象情報に詳しい人間なら暖冬の所為とでも言うだろうが…雪の姿はまだ無い。

ここより北の雪の多く降る豪雪地帯には、しっかりと雪は降り積もっているだけに珍しい。

そう言う自分は、当の昔に冬山に言ってウィンタースポーツを満喫したばかりなのだが。パウダースノーで、スキーやスノーボードをするには最適で、実に充実した記憶は新しい。

一面の銀世界。降り積もった雪によって、聞こえるのは雪を踏む音やスキーやスノーボードを滑る際に聞こえる音。
それ以外は、銀世界に音が吸収されているのでは?と言う錯覚が起きそうなほど静寂に包まれていた。

ある意味別世界に感じる場所だった。

その美しい銀世界を見つつ、地元では初雪すらまだで、こんな銀世界になることが無いであろう現実を思い出したりした。

そう考えたときに、この銀世界を従兄妹や叔母にも見せたらと浮かび、そして祐巳ちゃんにも見せたら喜ぶかな?なんて思った。

別に祐巳ちゃんは僕の彼女でも従兄妹ではないし、祥ちゃんのよ様に妹でもなければ、瞳子の様にお姉様ってわけでもない。ただ、僕が気に入った数少ない存在で烏帽子子であるユキチの姉で、祐巳ちゃんにあまり好かれていないだろうけれど、僕は彼女を好ましく思っている。

それが、恋愛感情か否かは曖昧だけど…好ましいと思っている。

そんな彼女に「儚く消える雪の花を見せたいな」などと言ったら、祐己ちゃんはどんな風に答えてくれるだろう?

「相変わらず、ロマンチストなんですね柏木さん」

呆れた調子で答えてくれる様子が何だか思い浮かぶ。
ついでに、「鳥肌がたっちゃいましたよ」何てキツイ言葉を紡ぎながら、腕をさすっているかもしれない。

それでも、優しい子だから、何だかんだ言いながら俺の戯言に付き合ってくれるかもしれない。

そんな、もしもの話を思い描きながら遠い初雪を待つのも意外に悪くない。
だからこそ、(駄目元で本当に誘ってみよう)何て、降る気配の無い空を見上げて俺は思いを馳せたのである。


おわし


2009.2.14. From:Koumi Sunohara

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