涼しげな目元

−不意に見せる優しい眼差し−

一言で柏木優と言う人を表現しろと言われた…。
雲のような掴めない人物。

何を考えているのかよく分からない人だと思う。
何時も笑みを絶やさず、柔らかな物腰で事を進める。

男女構わず人望が有るのも頷ける。

そうかと思うと、権限をふるに使った高圧的な方法で、丸く収める。
柔と剛…どちらを兼ね備えた存在なんだ…あの人…柏木先輩という人は…。

声を荒げて怒った顔なんて見たことは無い。
ただ外堀を埋め…気が付けば先輩の手の内に転がされる。
今現在居る…花寺の会長と言う役職だってその一つ。

先輩は俺を気に入ってると言うけれど、それ自体も何処までが本当なのか分からない。
絶対に隙を見せない…本質を見せない…何処か完璧で作られたような柏木優と言う人物は…。

そして…祐巳よりも俺との方がつき合いは長いはずなのに、気が付けば逆転しているような気がする。これは直感とかでは無く、事実だと俺は思う。

祐巳は何処か直感で動く節があるから、目に見えない柏木先輩の本質に触れているのかもしれない。
だからこそ、先輩も祐巳と居ても気疲れが無いのかもしれない。


よくは分からないが、祥子さんの家は妹と言う存在は特別に思っている節がある。
故に本当の妹の様な扱いを我が姉にする…それは先輩にも言えるのだろうか?
何となくそんな考えが浮かぶが、掴めないあの先輩相手ではサッパリと理解できない。

ただ言えるのはあの涼しげな瞳に、暖かな色を持たせるのは祐巳に対してだと言うことだ。
他の誰かが否定しても…俺は…俺にはそう見える。

「将来…本当に兄貴になったらどうしよう」

思わず俺はボソリとそんな嫌な予感を口にした。
そんな風に思わず漏れるほど…あの人の目は…我が姉君に優しい色を宿すのだから。


おわし


2006.3.13. From:Koumi Sunohara


★後書き+言い訳★
夏風10のお題5番でマリみて駄文。
柏木→祐巳軸の祐麒視点。
花寺の学園祭の時も子羊達の休暇でも…祐巳に優しい柏木さんを見て思いついた話です。
祐麒同様、そんな風に共感して下さる方がいらしゃれば幸いです。


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