オープン・ザ・セサミ
−人を変える魔法の呪文−



そよぐ風。
風に揺れる巻き髪を気にしながら瞳子は何時もの道のりを歩く。
並木道を歩き、風が木々を揺らす音を聞きながら。

歩くときに色々な事を考えるのが最近の習慣。
今日も何となく想いを馳せる。

その馳せた想いに瞳子は思わず顔を顰めてしまいましたわ。


(祐巳さまみたいに百面相になっていたら良い笑いモノですわ)


崩れる表情に力を入れて、何時も通りの表情に戻す私。
そして…。


(瞳子はあんまり悩むのは好きではありませんわ)


と心の中で呟きながら、私は小さく溜め息を吐く。


(大抵の物事には、YESかNOしか無いんですも。答えさえ導けば自ずと悩みは解消されますもの)


でも最近瞳子は答えの見えない問いが頭に巡りますの。
それは小さな事の筈なのに、まるで魚の小骨が喉に引っかかるように気になるんです。
まったくイヤになりますわ。


(これと言うのも、あの方に関わった所為なのかしら?)


巡る内容は至極簡単そうな…“すきの定義と好きな人”と言う言葉。

その言葉は難しい。

だって…肉親に向ける好きだってある。
勿論友人に対する好きも…人柄が良い人に向ける事もあるから。

“好きな人”と言う言葉は難しい。

昔の瞳子なら気にしなかった…だって祥子お姉様が好きで…優お兄様も従兄弟の兄として好きだから。
好きな人の定義なんか考える必要も無いし…結果はすぐに出てくる。


だけど最近は好きの定義が曖昧になってきてしまった。正確に言うなら…祐巳さま…あの方との出会いが私を変え始めた。
あの方の好き定義は様々で…(もしかしたら祐巳様は嫌いな人が居ないのではなくて?)…そんなあり得ない発想が瞳子の心の中で巡る程。

敵を知らず内に味方に変えるそんな不思議な人の所為。


(だけど不思議ですわ…側にいても不快な気分にならないんですもの。寧ろ…側に居たい…やだわ私ったら何を思ってるんかしら)


軽く首を振って今浮かんだ想いを消そうとしたけれど、その想いはなかなか瞳子の心から消えようとはしなくて…だから私は考え方を少しだけ変えることにしたのです。


(魔法の言葉をくれる祐巳様に…もう少しつき合ってみようかな)


と…不意にそんな思いを浮かべながら私は、薔薇の館に足を向けた。
魔法使いの紅薔薇の蕾の居る…その場所へ…。


END



2004.10.18. From:Koumi Sunohara


★後書き+言い訳★
今回は瞳子ちゃん視点で書いてはみたんですが…彼女の一人称が「瞳子」って付けるので何か違和感有りまくるものになりました。
御陰で色々考えていたモノを削り…意味不明度がUPした小話に…。何時かフォローしてあげれば良いのですがね。

ともあれこんなお話におつき合い頂有り難う御座いました。


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