海棠の雨に濡れたる風情 |
長雨が続く夏空。
憂鬱な気分に自然と向かうのは、こんな天気と言うのもあるのだろう。
まぁそれだけでも無く、従姉妹の祖母がかなり危険な状況にある所為でもあるかもしれない。
自分とは直接血のつながりがある訳では無いけれど、そんな事など関係なく自分にも大切な人だから悲しく憂鬱な気持ちになる。
俺でこうなのだから、従姉妹である祥ちゃんはもっと辛いのだと思う。
妹にしたばかりの、祐巳ちゃんと出歩くこともせずに…祖母を中心とした生活。
少し自分勝手とも言える姉の様子にも文句を言わない祐巳ちゃん。
だから俺は、祥ちゃんがちゃんと祖母の事を言っているのだと思った。
お人好しで、優しすぎる…祐巳ちゃんだから…理由をしっているから文句が言えずに待っているのだと…そう思っていた。
けれど、現実はぜんぜん大違い。
祥ちゃんは何も言っていなく、姉である祥ちゃんを煩わせたくない祐巳ちゃんが全てを押し込めて我慢していた。
泣きたいのに泣けない…泣き出す一歩手前の表情。
自分の知る福沢祐巳と言う少女のそんな顔は正直、信じられなかった。
お日様のような子だから。
けれど、彼女は人なわけだから…悲しい時も…苦しい時も…ましてや怒るときだってある。
それなのに、俺や祥ちゃんは気づかなかった。
すれ違いが続けば、幾ら絆が強いものにも隙ができる。
まして祥ちゃんは慣れていない…溝が溝を呼ぶのは目に見えて明らかだけど。
祥ちゃんはもちろんの事、俺もどうすることも出来なかった。
俺は彼女にとって…ただの祥ちゃんの従兄。
良いイメージの無い…不本意ながら銀杏王子と言う所だ。
祥ちゃんと祐巳の問題に挟む理由も無い。
歯がゆい気持ちでいっぱいになった。
たまたま見かけた祐巳ちゃんの悲しげな様子。
雨に濡れる花が、滴に耐えるように無理をする様子に。
そして何よりも…濡れる花を傘を差しだして救う事の出来ない自分に…。
だから願うことしか出来ない…。
願わくば…この雨が少しでも早くやむことを…。
姉と慕う祥ちゃんと共に花のような笑顔をみれる事を…。
切実に願う。
海棠の雨に濡れたる風情を眺めながら。
おわし
2006.5.30. From:Koumi Sunohara
★後書き+言い訳★ 柏木×祐巳20お題より。 レイニーブルー辺りの柏木氏の心情って感じです。 海棠は薔薇の意味なので、祐巳様とかけてみました。 どうなんでしょう…ネガティブすぎでしょうかね? |
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