ささやかな願い
高校に上がって、俺は福沢祐麒とその同級生に出会ってから、学校生活が楽しくなった。
別に今までが楽しくなかった訳では無いが…。
「優お兄様は、祐巳様達御兄弟の事お好きなのですね」
瞳子がリリアンの高等部に上がった直後に、面と向かってそう言われたのを未だに覚えている。
言葉の温度は呆れだったのか、はたまた嫌味を込めたものだったのか、思い出す事は出来ないけれど、確かにそんな事を言われた様な気がする。
その時の俺は、確か…。
「好きだよ。祐巳ちゃん。でも、祐麒も祥ちゃんも、勿論…瞳子の事も好きだよ」
そんな風に返した記憶があって、瞳子も流石に呆れていたような思い出があった。
(あの頃は、祥ちゃんは祐巳ちゃんの事ばかり小笠原の家で話していたし、俺は俺で祐巳ちゃんと祐麒が兄弟で今後も楽しい予感ばかりで、知らず知らずに祐巳ちゃんというが福沢家の事ばかり瞳子に話していたっけ)
俺や祥ちゃんが、福沢家の事を話す度に瞳子は興味なさそうだが、周りにそう感じさせない様に話を聞いていた。
それが、少しづつ福沢家の話をする内に瞳子も感化されたのか、興味を持ち始めた頃に、瞳子にそんな言葉を紡がれた。
(やっぱり、小笠原家関連は福沢姉弟の様なタイプを求める性質なのかな?)
変わりゆく従妹を何だか嬉しくなる。
(瞳子の姉が祐巳ちゃんがなってくれたら良いんだが…流石に甘く無いかな?)
祥ちゃん以上に不器用な瞳子には、祐巳ちゃんみたいな子が多分合うと俺は感じる。
瞳子の生い立ちに関わる事もあるけれど、それ以上に祥ちゃんの考え方を変えた祐巳ちゃんの不思議な力が必要だと俺は思う。
でも、俺や祥ちゃんが祐巳ちゃんやユキチの魅力に気がついた様に、彼女達の魅力に気がつく人間も沢山いる。
その証拠に祐巳ちゃんは、同世代はそうだが後輩に人気がある。
気さくな人柄な点、なのに薔薇様の妹というのにその垣根の低さが後輩からの支持が厚い。
先輩達にいたっては、いじがいのある可愛後輩といった所だ。
まぁここが、花寺のユキチとリリアンの祐巳ちゃんの違いかな。
祥ちゃんや俺は、偶然の巡り合わせで競争率の無い時に福沢姉弟に出会い、姉妹だったり、烏帽子親子関係になったが、瞳子については少し難しい。
(所謂、ツンデレの瞳子と祐巳ちゃんとの出会いは今一つ。今は大分改善されたけれど、姉妹に発展するのは厳しいか?)
何て俺は思うけど、瞳子には…。
「優お兄様にくらべれば、嫌われてないと思いますけど」
何て最近可愛くない物言いをするようになってきた。
(兄の心配…妹知らずとはこのことかな?)
小笠原の血がつながっていなくても、瞳子は小笠原の人間の教育を受けている。この事から考えても、ある意味小笠原の人間だ。
だからこそ、絶対に瞳子は祐己ちゃんを求める。
姉妹関係にならなくても…きっと、何か繋がりを求めるに違いない。
故に、瞳子にも感じて欲しいと思う。
祐己ちゃんやユキチに出会って、俺や祥ちゃんが…家の事では無く、一個人として…楽しい日常を知る様に。
(まぁ…瞳子が祐己ちゃんの妹にならなくても…俺が祐己ちゃんと結婚したら従妹関係になるから…それはそれで良いのか?)
等と、俺は祐己ちゃんが居たら全力で否定されそうな事を思いながら、近く無い未来の従妹と福沢姉弟と自分との関係が良いもになる事を祈らずにはいられなかった。
ありふれているけれど、優しい日常が過ごせる為に…。
おわし
2012.10.3.(WEB拍手掲載2012.9.4.) From:Koumi Sunohara