薔薇の花束



抱えきれない深紅の華

ボディーがキラリと輝く赤いスポーツカー

爽やかに微笑む王子様

女の子なら誰しも一度もは夢見るシチュエーション。
それを誕生にやったら、俺の愛しのあの子は喜んでくれるだろうか?



「おめでとう祐巳ちゃん」

そう言って彼女への誕生日のプレゼントを渡す筈だったのは、紛れもなく俺の筈だった。
なのに何故だろう…彼氏である俺を差し置いて…融叔父様が祐巳ちゃんに言ってる。
まったくもっておかしな話。

思わず俺は動揺を隠し切れずに側に居た祥ちゃんを見た。

「祥ちゃん…此は一体どういうこと?」

完璧な笑顔なんてとうに崩れた俺は、やや引きつり顔で祥ちゃんに尋ねた。
すると祥ちゃんは、俺が尋ねることに疑問の様で不思議そうに言葉を紡いだ。

「何って…祐巳の誕生日のお祝いでしょ優さん。まぁお父様は何を思ったのか手の込んだ事までしてらしゃるけど」

少しだけ融叔父さんに呆れる様子の祥ちゃんだけど、とても微笑ましそうに眺めている。

「確かに祥ちゃんのスルーである祐巳ちゃんの誕生日だけど…アレは彼氏が彼女に贈る図だよね」

「いやだわ優さん。焼き餅?見苦しいわよ。第一今更だわ、彼氏ならもっとサプライズ的な事が出来なくてはいけなくてってよ」

「…」

押し黙る俺に、祥ちゃんはニコリと笑顔を優雅に浮かべた。

「ちなみにお祖父様は、この後祐巳と遊園地に行くそうよ」

サラリと爆弾を投下する俺は、真っ白になりそこで俺の意識は途切れたのである。


ズキズキと痛む頭をさすりながら、俺はゆっくりと目を開けた。
其処は自分の寝室で、先までの場面と異なっていた。

一瞬何が何だか理解できなかったけれど、今まで自分が夢を見ていた事に気が付いた。

(そうだ夢なんだ…夢だよな)

第一彼女…祐巳ちゃんは残念ながらまだ俺の彼女では無い。
それに、漸くマイナスからプラスに傾きはじめてきたばかり。
彼女になんて収まってる筈もなく、嫌われなくなっただけ有り難いと言う立場。

(願望が夢に出るって言うけど…そうせならハッピーエンドな夢を見せてくれたって良いのにな〜)

何て我が儘な想いを浮かべる自分に少し呆れる想いはある。

(まぁ…これから私に行くと言うのがねじ曲がってあんな夢を見せたんだろうね)

溜め息を吐きながら、俺はらしくなく緊張する自分に苦笑を浮かべる。

(実際かなりドキドキする。君がどんな反応を見せてくれるのか…。笑ってくれ何て言わない。喜んでくれとも言わない。ただ…拒絶だけはしないで欲しい。今はまだ受け取ってくれるだけで、十分に幸せなのだから。それだけが、俺の願いなんだ)

「まぁ欲を言うならあの祥ちゃんに向けるような笑顔を見せてくれると良いんだけどね」

今から君に渡しにいく薔薇の花束を見ながら、俺は小さく願い事のように呟いた。


おわし


2006.3.5. From:Koumi Sunohara


★後書き+言い訳★
Happy Birthday5のお題よりマリみて駄文。
今度こそ柏木×祐巳だと思った方には申し訳ないですが…。
今回も未満で…しかもコメディー風味。
コレの続きはシリアスにしたいなぁ〜と…。
それは皆様のご想像にお任せするという事で…。
web拍手2006.1.26掲載作。


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