花 衣
−君の纏う花の名は?−


ヒラリヒラリ舞う薄紅の雨。
儚く散る潔さ…葉桜となった後も凛として美しい。
冬の寒さにも臆することなく固く蕾を護る強さもまた…凛としている。
綺麗だけではない…内面の美を感じる花だ桜の樹というものは。

だからこそ思う…。
薔薇の花よりも…君は桜がよく似合うと…。

薔薇には刺があり…美しい以外の強さもあるけれど…。
桜からは穏やかな優しさも含まれる…本当に祐巳ちゃんらしいと思うんだ。

別に紅薔薇が駄目だとか似合わないとか言っている訳では無い。
寧ろ…最近の君は本当に紅薔薇の蕾としてしっかりしていて…祐巳ちゃんは相応しいと思う。

それにだ…まだ花を咲かせていない蕾の君は、確かに愛らしくて…それでいて凛としている。
出会った時の印象は、たよりないけれど可愛い子…それが今は祥ちゃんと並んでいても劣らないほどしっかりした芯のある女の子に変わった。
勿論可愛いと思うし…甘やかしてしまいたい庇護欲は相変わらず健在なのだが。

ただ僕の勝手なイメージでは、君の中の花は桜なんだ。
春の日差しに舞う桜…儚いけれど…強さを持つ桜の樹…。
福沢祐巳という一人の少女を指すのに相応しいと思える。

別に祐巳ちゃんに桜の季節に出会った訳では無い。
寧ろ…一度目の君の一年生時代の初めの春は知らない。

だけど…僕が卒業する頃の春の君は秋に出会った時よりも成長していたし…二年にあがった時に桜の樹の下で見た君は本当に僕イメージする桜とマッチしていたんだ。
色んな四季を強さと儚さと…凛とした美しさを持つ…誰にでも親しまれるあの花。

例え僕がそう思っていたとしても…君が紅薔薇様と呼ばれる日が近い内に来る。
祐巳ちゃんは成れないかも知れないと言うかもしれないけれど…必ず君は紅薔薇様になるだろう。

その頃にはもしかしたら、君の一番は変わっているかもしれないし…変わっているかも知れないだろう。
例え…君の一番が祥ちゃんだとして…そして…大事な存在が君の妹だとしても…。
君の本質は恐らく変わらない…僕の想いと同じように。

祐巳ちゃんにどう思われようとも…それでも僕は…君を見続けるだろう。
薔薇の花よりも桜が似合う君が…薔薇という名の花衣を纏う姿を…。
そう遠くない未来を思い僕は…少しだけ遠くなる君にセンチメンタルな思いを募らせた。

季節は君に始めて出会った銀杏の実がたわわに実る…ある日の出来事だった。

おわし


2005.8.30. From:Koumi Sunohara


★後書き+言い訳★
花華10のお題よりマリみて小話…相変わらずの柏木→祐巳です。
柏木さんを書くと自分でも恐ろしいほど臭い科白が出てくるんです。
本当に不思議です…本当は祐巳ちゃんも絡ませる話を書きたいのですが…なにぶん文才が…。
地味な活動が何時か実を結んでくれると有り難いのですがね。
同志求む。

こんな話ですが…少しでも楽しんで頂けたら幸いです。


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