何時か変われる事を願って  

私の好きな人は、近いようで遠い人。

何時もひた向きに頑張るナルト君を見るのが好き。
それが恋情なのか、単なる憧れからくる好意なのかは、線を引くには曖昧すぎていい表すことは難しいけれど。

ただ言えるという事は、ナルト君が大きな意味で好きだと言う事。

倒れても、何度も立ち上がるその姿に私は知らない内に何度も勇気を貰った。出来ない事に悲観して、後ろ向きになるんじゃなくて、前をひたすらに向いて進む姿は、後ろ向きな私にはまぶしい位凄いことだった。

太陽みたいで、キラキラしていて、側にいると温かな気持ちにさせてくれるナルト君は、本当は色々な人に愛されるべき存在だと思うけれど。様々な彼を取り巻く環境の所為で、里の人に冷たい迫害を受け続けてきた。

それでも、ナルト君は前を向く事を諦めなかった。凄い事だと純粋に思う。

忍者学校の時から、そんなナルト君を見つめ続けてきた。何時か、こんな自分にナルト君が気づいて、嫌な顔をされるのではないのか不安で仕方がなかった。

自分ではこっそりと彼を追っているつもりだったのだけど、いのちゃんやサクラちゃんはバレバレだと言っていたから、余計にそう思う。

ストーカーみたいだと思われるかもしれない、気分を害するかもしれないと思っても、ナルト君を見ていることはどうしても諦めることができなかった。

サクラちゃん達のように、好きな人に振り向いて貰う為に頑張る姿に羨ましくも思うけれど、私の性格上それはどんな事よりも難しいこと。

本人を前にして、赤面せずに、気絶せずに普通に話す自信すら無い私には、サクラちゃん達の様には振舞うことは事は出来ない。

それでも、私の出来る事でナルト君の為になる事をしたいと思う。些細な事でも良い、他の人からはくだらないと思われる事でも良いの…ほんの少しでも役に立てればと思う。

この気持ちは、きっとサスケ君を思うサクラちゃん達にも負けないと自負できる。

そう考えた時、私に出来る事は、忍者としての力を磨くことしか無かった。変な話、ナルト君の盾になれるように、怪我をしたら治せるように…サクラちゃん達と違った意味で自分を磨く事に私はした。

ナルト君は、きっと私がナルト君の盾なんかになったら怒ってしまうかもしれない。強いけれど優しいナルト君は、自分が傷つくよりも他人を傷つく事が嫌がるから…。大好きなサクラちゃんはもっての他だとしても…。

それでもね…私は、火影を目指す貴方の役に立てる何かになりたい。
迷惑かもしれないけれど、それでも私の思いは貴方の言った忍道の様に真っすぐ願う気持ち。
こればっかりは、サクラちゃんにもいのちゃんにも…誰にも譲れない気持ち。

けれど、気持ちだけではナルト君の盾にもなれない、ただの足手まといになってしまう。

だからわたしは、ナルト君の居なかった3年間、私はネジ兄さんの様な上忍まで上がる事はできないけれど、中忍にまで上がる事が出来た。

自分の努力もあったけれど、周りの人達の協力も大きかったように思う。

ナルト君に出会い、関わったおかげで、彼にかかわる人達は優しい心を持つ人が多いし、良い方向に変わっていく。そのお陰で、私も卑屈にならずに上を目指す事ができた。

本当に太陽の様に皆に色々な影響を与える人なのだと、木の葉を離れているナルト君をしみじみと思う。

中忍になって、相変わらず紅先生の班で、キバ君とシノ君とのチーム。私の持つ血継限界が必要だと言って違うチームに入る事もある。任務で必要とされる喜びを私は知ることが出来た。


そんな風に過ごす日々の中、ナルト君が約3年ぶりに里に帰って来た。

噂で聞いていたから、凄くドキドキして、挨拶の仕方も色々地味に考えたりしていたのだけど、現実は本当に唐突で…。私とナルト君の出会いは本当に何時も突然。

路地の角を曲がってバッタリ出会う。結局何も言えずに、赤面したまま気絶。

(嗚呼…私。ナルト君に対しては全然成長できてない)

どんより落ち込み、成長できない自分にちょっとぐちが零れる。「今度こそ」と毎回意気込みながらも現在進行形で実現できない自分に情けなさを感じつつ、やっぱり「今度こそ」と思う自分は、意外と神経が太くなってきたのかもしれない。

接点がありそうで無い私とナルト君。だから「今度こそ」はきっとそうとう後なのだと勝手に思っていたら、「今度こそは」意外に早く訪れた。


砂の里の任務から、サスケ君に関わる情報が手に入り…気がつけばサスケ君の捜索隊が組まれる事になった。奇しくも…その任務が「今度こそ」の場面となった。

サスケ君の捜索には、白眼の血継限界の力やキバ君、シノ君の力が必要だという事で、任務に加わる事になった。ナルト君へのドキドキは強いけれど、赤面して倒れている場合では無い現実に、私の「今度こそ」は何とかなりそうだった。

それに嬉しかった。

サスケ君の捜索隊に加わって、白眼の血継限界を持っていて良かったっと思ったことは、大袈裟じゃなく心底思った。それは、ナルト君の為に私が出来るささやかな手助けだから。

班員も違う私は、サクラちゃんほどナルト君と近しく無い。そして、傷つく彼を一番に助ける医療忍者はサクラちゃんであって私じゃ無い。

そう考えた時に私がナルト君へ恩返しや手助け出来る事なんて、微々たるものしか無い。

だからこそ、嬉しく思う。

それ故に、幸せに感じる。

(嗚呼、日向に生まれて…この時だけでも良かった)

そんな風に思う。

サスケ君を探すという、ナルト君にとってなにより大切な事で、願ってやまないことだけど…私は不謹慎にもそう思ってしまう。

「私は貴方の力に少しでもなっていますか?」

誰にも聞こえない声で私は、ポツリと呟いた。


おわし

2009.11.26. From:Koumi Sunohara

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