昔の私は、自分の名前が、好きになれずにいた。
―白眼の『日向』の家を背負うには、私には重すぎると思った―
―自分の名前と自分とのギャプが辛かった―
『ヒナタ』…私の名前。
お日様の様な、キラキラと光りあふれる名前。漢字で書けば、『日向日向』。
重い家の名前が2つになる。
重すぎる、名前。
相応しい人は、私じゃない。
相応しいのは、私の従兄弟…強い力と強い心の持った従兄弟。
まるで、“灼熱の太陽”全ての者を焼きつくすような従兄弟。
私には、その光は強すぎる。
それとは、逆に“名前負けした、内気で弱いただの陰”。
暗い気持ちで、心が満たされる。
だから、俯くことしかできなくて。益々、名前から遠ざかる。
(何もかも、私の存在も諦めるように、目を閉じれば、楽になれますか?)
不意に浮かぶそんな想いも…昨日今日の問題じゃない。
それほど憂鬱に思う想い。
だけどね…最近そんな想いが少し変わりそうな気がするの。
「ヒナタ」
呼ばれる事も、自分で背おう事も好きではない音。
嫌いな、名前だったんだよ。
でもね、…私は今、この名前を好きになれた。
きっかけを与えてくれたのは、大好きな人。
自然に愛されているように、お日様の色に近い金の髪、空の色を受け継いだ、蒼の瞳、周りに勇気を与えてくれる、笑顔。
その人は、うずまきナルト君。
『白眼の日向』や『日向ネジの従妹で本家』ではなく、『日向ヒナタ』個人を、初めて認めてくれた人。
真っ直ぐ、私の目を見て話してくれる。
でも、何時も恥ずかしくて、俯いてしまうの。
その為に、ナルト君の中の私は…『暗い、変な奴』。
それでも、良いの。
私を私と見てくれるのが嬉から。
「ヒナタ」
ナルト君に呼ばれると、力が沸いてくる。
不思議な、力を持ってるナルト君。
だって、私を変えてくれるから。
優しい心を、思い出させてくれるから。
いつものように、私は川辺にたたずみながら、自分の存在に疑問をなげかけていた。
川辺にやって来た、ナルト君に突然声をかけられた。
「ヒナタ、どうしたってば?」
「あっ、ナルト君…」
嬉しさと、恥ずかしさで、いっぱいな私。
(こんな、所を見られるなんて…)
恥ずかしくて、俯いてしまう。
「元気無いけど、どうかしったてば?」
「何でもないよ、心配してくれて有り難う」
私は、笑顔で答える。
「無理に、笑わなくてもいいてばよ」
ふいに、ナルト君にそう言われた。
正直言って、驚いた。
だって、図星だったから。
「俺で良ければ、相談にぐらいにはのれるてばよ!!」
優しくそんな、言葉を真っ直ぐな目で言われたから、甘えてみたいいと思った。
貴方は、白眼が怖くはないの?
(覗かれる恐怖は、ないの?)
「私の目、変だと思わないの?」
そんな意味も込めて、唐突にナルト君に尋ねてみた。
返ってきた答えは、意外な言葉。
「何で?別に変じゃないってばよ!」
「でも…」
私が、言葉を濁らせるとナルト君が少し唸った。
「う〜ん、そんな事言ったら、俺の目の方が変だってばよ」
「そんなこと無いよ!」
自分でも驚くぐらい、大きい声で即答していた私。
「えっと、あの〜、その…、ナルト君の瞳は、空みたいで綺麗だから…」
しどろもどろな上に、支離滅裂な言葉になってしまった。
私を見て、ナルト君は、大きく目を見開いていった。
「だから、変じゃないと思う!」
「有り難うてばよ、ヒナタ」
私の言葉に、ナルト君はとびきりの笑顔で返してくれた。
それから、しばらく二人ではなしていた。
色々な話に、花を咲かせているときふいに私が、不意に独り言のように言った言葉。
「ナルト君は、お日様みたいだね」
何故そんな話になったにか、覚えてなかったけれど、私はふとその言葉を呟いた。
「何で?」
返ってくる返事に無論、戸惑う私。
「あ…あのね、私の名前が『ヒナタ』でしょ?名前と合って無いから」
「?」
疑問符を、浮かべるナルト君。
益々、変な子だっと思ったかな?
私は、さらに続けた。
「お日様の、ような強い輝きがないから」
ナルト君は、成る程と頷く。
「合ってると思うてばよ!」
「へ?」
(合ってる?輝きがないことが?)
今度は、私が疑問符を浮かべた。
「ヒナタは、柔らかいお日様の光、みたいっだてばよ、だから合ってるてば!」
一瞬何を、言われたのか分からなかった。
ナルトくんの、言葉を心の中で、反復させる。
そして私の中の、結論がでる。
ー灼熱の太陽も又、日の光なら、木漏れ日もまた、日の光ー
(強い輝きだけ、が全てじゃないて事なの?)
だから、尋ねた。
「そうかな?」
「火影になる、俺が言うだから、間違いなしてばよ!!」
自信満々に、断言するナルト君。
「それに俺てばは、優しいお日様の方が好きでってば」
笑顔で答える。
本当に、幸せそうに笑うから、私も何だか、幸せになるの。
「有り難う、ナルト君」
「どういたしまして、てばよ」
太陽と、見まごうばかりの笑顔。
私まで、明るくなれる。
不思議な笑顔。
言葉を、続けるナルト君。
「今日は、ヒナタ俯かないで話してくれたから嬉しいてばよ」
(俯いてない?私、俯いてなかったの?)
「何時も、そうやって話してくれたらいいと想うてればよ♪」
(本当に、そうおもうの?)
「じゃな!ヒナタ」
大きく手を振り、夕日に向かって走るナルト君。
「…うん、ナルト君またね」
勇気を振り絞って、そう返す。
「おう!」
振り返り、また大きく手を振って返すナルト君。
目映いばかりの笑顔を携えて。
それは、不思議と心が和む。
私は、その背中を見送った。
『日向日向』重い、重ねられたこの名前。
私に、魔法をかけるように、勇気という力をくれた君。
嫌いを誇れる想いにしてくれたのは、太陽に愛された君の言葉。
今なら私は、この名前を誇れることが出来るから。
貴方の、隣に立てる力を秘めているから。
灼熱の太陽じゃなくていい。
貴方に差し込む、木漏れ日のように。
貴方を見守れるように。
必要とされるように。
目を閉じるのは、まだ後で良いんだね。
強くなりたいと、今心から想えるよ。
おわし
2001.3.23 From:Koumi sunohara
★後書きのような、言い訳★ |