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((プロローグ))2001.3.5 From:koumi sunohara
この日、崑崙山崑崙山は、いつもに増して賑わいをみせていた。
そもそも、今日この山の教祖である元始天尊が、仙人を志す若者(?)もとい、道士の育成の為の特別合宿開催を前々から伝えていたようである。
そのため、色々な洞府から、ここぞとばかりに道士達が集まってきたというわけだ。
しかし、これだけの人数を相手に元始天損は、どのようにして講義を行うのであろうか?
このような、心配は無用なのだろうか?今まさに、一波乱起きそうな合宿の、幕が上がった。
『課題1 崑崙山200周』
道士の群を迎えた者が、切り立った岩の上に見えた。
「やーみんな、道徳真君だ、仙人の基本は、体力!さー俺と一緒に頑張ろうじゃないか!」
高さは、約50mそこから道徳真君は、大胆に飛び降りた。
無論、無傷であるのは、言うまでもない。
すると道徳真君は、突然走り始め、道士達は、呆然とその様子を見つめていたが、我に返り、道徳真君の後を追いかけた。
序盤から、ハイペースで走る道士を見るなり、道徳真君は、少し困った顔をしている。道士達は、少し首を傾げたが、道徳真君が、なぜそんな、表情をするのか?と言いたげだった。
その直後だったろうか、20〜30人が、呼吸困難で倒れ始める。
「おいおい、まだ半分なんだから、無理するなよ、自分のペースで頑張ろうじゃないか」
道士達も自分のペースを掴んできたようで、倒れる者もいなくなった。
ドドドドドドドドドドドドドドド。
音と共に大地の揺れが訪れる。
その揺れは、大きな波のように道士達を呑み込んでいく。
「あっ・・・言うの忘れてたけど、この辺、質の悪いモグラが居るんだよ・・・て、遅かったかな?」
ボコボコボコボコボコボコ。
道徳真君の足下から奇妙な音を立てて、質の悪いモグラが表れた。
「ほー道徳、質の悪いモグラとは、酷いのー」
「えっいやあのー、懼留孫殿、じょ・・・冗談です冗談」
「ふん、しばらく埋まっておれ」
懼留孫は、短く道徳真君に言う。
ズボズボズボズボズボズボ。
鈍い音と一緒に道徳真君は、穴へと沈んだ。
「懼留孫様そろそろ、人数が減ったようですから、課題2の方に連れて行きますね」
空の上から白鶴が、懼留孫に言う。
懼留孫は、手を振って答えると、白鶴の足に飛びついた。
白鶴もまた、気にとめずに、無事な道士達を先導していった。
穴に埋まった道徳真君の運命はいかに?
『課題2 無謀な挑戦』
なかなか、可愛らしい(死)懼留孫は、ほっといって、先ほど白鶴によって、連れてこられた道士は、最初の人数の1/3になっていた。
道士達は、いたって質素な部屋に通される。部屋は、無機質・殺風景そのような、言葉が良く当てはまる、そのくらい、なにもなっかた。
白鶴は、奥にいる人影に向けて「それでは、広成子様、赤精子様、課題の方、お願いしますね」短く言うと、足早に、その部屋を後にした。
去っていた、白鶴を見送り、自分達の前に立っている者を、道士たちは、見た。
「小官は、十二仙の広成子だ、ここでの課題は、小官の、目をかいくぐりながら、部屋から脱出する事である」
この軍人口調に、幾人かの道士も移ってしまっているのか、「了解」などと、口々に言っている。
広成子は、満足げに、道士を見ている。
(なかなか、教養が身に付いているようだな、素晴らしい)
「くそ真面目にやって、馬鹿だねーお前等は、クックックックックック」
頭を抱えながら、赤精子は道士を不適な笑みで見つめた。
「赤精子、貴様は小官が、指揮を高めている時に、水を差すとは、何事か!」
「水を差す?ハハハハそれは、愉快なこった、ここは、軍隊か?頭おかしいじゃないのか?ボンクラ長官さん」
ブチ。
いかにも、不健康そうな音が静かな部屋に響く。
「し・・・小官を、ぐ・・・愚弄するきかぁぁぁぁぁ!」
「ありのままを言ったのさ」
今にも消えそうな低く、殺意のある言葉を広成子は紡ぎだしていた。
「殺してやる赤精子、者共、敵は赤精子小官に続け!」
先程から、広成子側のテンションの上がった道士達が広成子と共に赤精子の方に走り出した。
「ボンクラ長官の、愚かな部下が、群をなしておいでなすた。我が真剣の錆としてくれる!」
完全に狂っている。
赤精子の側にいた道士達は、青ざめていた。
(広成子側になったら、本当で殺されるかも、しれない)
動物的本能により、彼等は赤精子側で闘うことにしたのである。
という理由で、ここに、広成子軍VS赤精子軍の構図が出来上がった。
普段から、この両者の乱闘によって起きた被害が大きいのは、有名すぎる話である。
今回の被害は予想出来ないものであるのだ。
「諸君、これは聖戦だ!死力を尽くして闘おうではないか!」
オオオオオオオオオオオー。
興奮状態の広成子軍。
「死にたくなかったら、一人でも多く倒せ!クッククック、血と肉の祭りの始まりだ!」
この聖戦もとい、血と肉の祭りは、奇跡的に死者が出なかったらしい。
『休憩 お茶処宇治園』
広成子と赤精子の闘いの中、運良くその場から逃れた者は、50人程しかいなかった。あんなに、大人数だったのが夢のようである。
そんな彼等に白鶴から労いの言葉をかけられ、道士達は胸を撫で下ろした。
「ここは、休憩場です。ここで休むもよし、次の課題に行くも良しです。さて、どうしますか?」
願ってもない申し出に、大半の道士達は、お茶処に立ち止まった。
しかし、4人の道士だけは、白鶴の後を追ってお茶処を、後にする。
白鶴の足には、まだ、懼留孫がしっかり、付いていた。
さて、お茶を呑気に飲んでいる道士達は、それぞれ、思い思いの話題に花を咲かせていたのである。
「おんやーまー、こんなにお客さん、が来るとは、思わなかったねー」
飄々とした声に一同は、凍りつく。
「う・・・雲中子さ・・・様!」
道士の悲痛な叫びが、静かな部屋の中に響きわたる。
しかし、逃げたくとも彼等の体は、ピクリとも動かないのである。
道士は少し困惑した様子だったが、急に何かを悟ったのか、今度は、血の気が引いた。
「大丈夫、気になるのは、最初だけだから。今より強くなるんだから、良いんじゃないか」
(失格の方が、良かった)と道しは、今置かれている、自分の立場が、どれだけ不幸であるか、今更ながら嘆いていたのである。
ほどなく、雲中子に改造された道士は、翼や尾、角etc・・・が生えた哀れな姿になっていた。
そこに、太乙真人がやって来たのはこの不幸な出来事の30分後のことである。
「おやおや、全滅してる。やっぱり、君の仕業なんだろうね、雲中子」
「テクノロジー夜明けてところさ」
悪びれずに、サラリと答える。
太乙真人は、大げさに手を広げた。
「まー、君の美学は、理解出来ないけどね。実験の結果には、興味があるからね、少しサンプル貰っていくよ」
「良いよ、科学の礎になるのなら、彼等も本望だよきっと」
こうして、道士のフォローも、何も無いもないまま、お茶処宇治園の夜は更けていったのである。
『課題3 全ては、運を天に任せて』
お茶処に寄らなかった、幸運な(?)道士は、わずか4人しかいなかった。
その道士を案内していた白鶴は、少し戸惑っていた。
(それにしても、他の道士達は大丈夫でしょうか?まー、太乙真人様ですから心配無いと思うんですが。後で見てきましょうやっぱり)
それでも、道士の前では、平然を装っている白鶴は、流石と言えよう。
「さて、課題3の説明ですが、私も詳しく告げられてはいません。ですが、一人一人、各部屋で課題をすると言われています。頑張って下さい。」
道士は、自分達の目の前にある部屋の扉を、まじまじと見つめた。
一つ目、「至ってシンプルな普通な扉」、二つ目「鉄の扉」、三つ目「和風の扉(と言うより、戸)」、四つ目「花の飾ったファンシーな扉」。
この中で何とも言えない四つ目の扉で入るべきか否か躊躇している、道士が、白鶴の方を向いた。
「あ・・・あのー?リタイヤて、駄目ですか?」
今にも途切れそうな、ボソボソとした声で、白鶴に尋ねた。
白鶴は、少し間を置いてから、ポツリと呟いた。
「判りました。良いですよ」
その言葉に安堵したのか、道士は笑顔でその場を、立ち去ったのである。 彼を見送り、白鶴もその場を後にした。
{一つ目の部屋}
一つ目の部屋の扉を開けると、人当たりの良い笑顔が、迎えてくれた。
道士の表情が少し、緩む。
「色々と大変みたいだったね、お疲れさま。ここでは、普通の事やるだけだから、安心して良いよ」
普賢真人は、幼い子供に語る口調で道士に、話しかけている。
道士を部屋の奥に促した。道士は、普賢真人の後を続いた。
部屋の奥には、不機嫌気味に腕組みをしている、玉鼎真人が仁王立ちで、道士を見ている。
道士の顔に緊張が走った。
ちなみに、玉鼎真人には、悪気はない。
元々、この様な顔立ちなのである。ただ道士には、先程のように、怒っていると、思ってしまう。
「玉鼎真人師兄、課題の説明の方、お願いしますね」
明るい普賢真人声で、道士は我に返り、玉鼎真人の方を見やる。
「課題は、ごく簡単な事をしてもらうだけだ。お前は、だだ集中をするだけだ。」
玉鼎真人は大変口下手だった。そのため、道士は意味がわからなかった。
首を傾げて、普賢真人を見た。
「フフフ、ここからは、僕が説明しましょう」
普賢真人は、玉鼎真人の方に、目だけ向けている。
勿論、顔は笑顔だった。
そんな、普賢真人を、ややうんざりしていたが、彼の表情は、相変わらず無表情であった。
普賢真人の説明は、分かりやすいのだが、長かった。
(もしかしたら、これが、課題なのではないのか?)
道士は、ふとそんな、事を思った。
「じゃー、自分の得意な事やってもらうから、あんまり肩に力をいれなくていいからね」
話を簡単にすると、次のようになる。
とにかく、自分が、もっとも得意とするジャンルで集中力を高めろというものである。
道士は、少し考えてた後、部屋にあった適当な、鉛筆と紙を持ち、椅子にすわる。
すると普賢真人は、顔を輝かせた。
「君、絵描けるの?じゃじゃ、僕を描いてよ」
道士は、黙って頷いた。
静かな部屋には、鉛筆が紙に触れる音だけしか、聞えない。普段はなら、心地よい緊張感なのだが、ギャラリーが、ギャラリーなだけに、手に振るえが、走る。
「終わりました」
普賢真人は、嬉しそうに道士を見たが、玉鼎真人が、道士の描いていた、絵を奪う。
「良い出来だな」
半ば溜め息混じりに呟く。
「師兄、それ僕が描いてもらたんですよ」
わざと不機嫌な顔を、作っているのか?本当なのか?普賢真真人は、そんな表情をしていた。
「すまなかった」
玉鼎真人は、憮然な態度をとっている。
道士は、彼等の会話に、少し意識を失いかけながら聞いていた。
道士には、この状況は光栄過ぎた。
そのため、彼の頬は紅潮気味だったのである。普賢真人と、玉鼎真人に、これ以上誉められれば、間違い無く彼は倒れるだろう。
「凄い、上手だね」
皮肉にも道士にトドメの一撃を、与えたのは、天使の微笑みを持つ普賢真人であった。
道士は、遂に呼吸困難を引き起こし、哀れにもその場に、倒れてしまったのである。
これにより、この道士の合宿は、ここに終わった。
{二つ目の部屋}
重い鉄の扉を汗だくになりながら、
道士はやっとの思いで開けたのである。
「お?良くここの扉開けれたなー。うん?お前さん、体力あるんだなー」
は、ハキハキとした声で、道士に話しかけた、慈航道人。
道士は目を疑った。
この、部屋の温度は五十度ほどだたのである。
立っているのがやっとな、道士を尻目に黄竜真人は、この暑さを、苦にしていない様だ。
「ここの課題は、無いんだけど。いい機会だから、俺と一緒にトレーニングでもしていかねーか?元始天尊様の所に行く前にどうよ」
半ば強引に、トレーニングすることになった。
慈航道人に連れられて、部屋の奥に通される。
そこには、トレーニングの準備を進めているが黙々と、作業していた黄竜真人。
「お前に任せると、俺の出番ね―な」
少し苦笑しながら、慈航道人が話しかけると、黄竜真人は、困った顔をした。
トレーニングは、簡単なメニューで、腹筋、背筋などを、百回くらいというものである。
まー、道徳真君のメニューに比べれば、朝飯前である。
しかし、先程もご忠告した通り、この部屋は50度という温度なのである。
普通の人間には、耐えられないだろう。
この道士もまた、例にも漏れず普通の人間であった。道士は、背筋五十回目に遂に力尽きたのである。
そのことに気が付かない、慈航道人に痺れを切らした黄竜真人が、たまらずに声をかける。
「黄竜真人、道士が白目剥いているが・・・・」
慈航道人は、慌てて道士を担いで、部屋を後にした。
その後を、黄竜真人は、やはり黙って、歩いている。
{三つ目の部屋}
日本風の引き戸を、道士が恐る恐る開けると、部屋の中には、巨大なゴキブリが座って、お茶を飲んでいた。
「あ・・・あのー」
声をかけると、ゴキブリ・・・こと文珠天尊は、面倒臭いと言わんばかりに、部屋に貼ってある紙を示した。
「部屋のゴキブリを駆除せよ」とかいてある。
文珠天尊は、道士にハエ叩きと、ゴミ袋を手渡すと、道士は、困った顔になった。
理由も分らぬまま、道士は黙々と、ゴキブリ駆除を始めたのである。1匹1匹気の遠くなる作業を真面目に取り組んでいたが、奴等は全然減らない。
道士が悪戦苦闘の最中、四つ目の部屋の中では、一向に客(?)もとい、道士が来なく、暇を持て余している、道行天尊と、のほほんと茶を飲んでいる霊宝大法師がいた。
「遅いでちゅ!こんなにお部屋を、可愛くしたのに、なんで来ないんでちゅか?」
すぐ隣の霊宝大法師に、同意を求めるが無視される。
霊宝大法師は、無視を決めながら、湯のみ茶碗を覗き込む。
「ホッホッホッホ、茶柱とは縁起が良いのー」
道行天尊は、部屋の中を二,三度周り、それに飽きると、部屋を出ようとした。
「うむ?何処へ行くんじゃ?」
「遊んでくれないから、隣に行くんでちゅ!」
そう答えると、部屋を後にした。
(なんか、足が重いでちゅ)訝しげに足を見ると、足には例宝大法師がくっ付いていた。
「一人で、茶を独り占めは、させんからなー」
道行天尊は、呆れて何も言えなかった。
道行天尊がアホな事をしている間にも、文珠天尊の所に来ている道士は、ゴキブリとやはり、戦っていた。
数え切れなかった、ゴキブリも後わずかにまで迫っている、そんな時。
静かに引き戸が開けられる。
「遊びに来たでちゅよ」
元気な声が、辺りに響くが、リアクションは、まったく無い。
しまいには、霊宝大法師と文珠天尊
は、呑気に茶を飲んでいる。
「おい、人の話聞けー!」
ついに、堪忍袋の緒が切れた道行天尊は、文珠天尊と霊宝大法師に食ってかかるが、軽くあしらわれた。
道行天尊の怒りは、収まらず、道士に、矛先を変えた。
が・・・しかし、道士に向かって飛んでいった道行天尊を、道士のハエ叩きが命中。
「こ・・・殺す」
道行天尊の殺意に溢れる目が、道士を捕らえたかと、思うと、道士は床に沈んだのである。
〈エピローグ〉
最終的に、誰も元始天尊の所にたどり着くことが出来なかった。
「元始天尊様、誰もここまで、たどり着けませんでしたねー」
白鶴は、元始天尊に目を向けたが、元始天尊は、何も答えない。
(あの、メンツを使えばこうなるだろうと、分っていたはずなのに・・・)
大きな溜め息をつく。
各課題の惨劇を、まざまざと見せつけられている白鶴には、この合宿の意味が分らなくなっていた。
それに気が付いたのだろうか?元始天尊が、口を開く。
「白鶴よ、今回の合宿の定義に気がついてないようじゃのー」と大げさに溜め息をつく。
「十二仙も日頃の疲れも溜まっておろう?たまには、リフレシュも必要じゃろうて。フォフォフォフォ」
いかにも嘘ポイ言葉に、白鶴は感動していた。
「流石です。私は、まだまだ修行不足です」
元始天尊は、黙って白鶴を見ていた。
こうして、長い長い1日は終わったのである。
〈おまけ〉
課題2の時に埋められた道徳真君は、合宿が終わってもしばらくの間、忘れられたそうな。
END
★後書き★
ちなみのこれは、羽柴麗拝様へのゲスト原稿だっ
たモノをのせたものです。
短い癖に、最初何個も区切っていたので…1つに
まとめてみました。
此方の方が読みやすと思うのですが…。
どうなんでしょうかね。