真夜中のパーティ
−夢と幻の狭間の記憶ー




秋は収穫祭や豊穣に感謝する祭が多く行われる。
勿論お月見もこの時期で…月を眺め酒や食べ物を楽しむ時期とも言える。
子供から大人…老人まで心浮かれる時期であるらしい。

そんな誰もが喜ばしいこの時期に、浮かぬ顔の少年一人。
木の葉の里一の悪戯小僧…うずまきナルトである。

運命の悪戯なのか…何も知らぬ赤子の時に封じられた九尾…(ようは私なんだが)の所為で彼は里一の嫌われ者…いや…忌み嫌う対象者となってしまった。別段宿主が悪い訳では無いのにだ。

本当に人とは面白い…それでいて悲しいほどに滑稽な生き物だと最近ことさら思うようになった。

遠い昔…自分も神のように扱われ…祭り上げられた時期もあったが、それは遠い過去の記憶。今は存在じたいが疎まれる存在…畏怖の対象。

まぁソレは色々な時代の流れであり、自身の起こした諸行の数々。
人の言葉を借りるとすれば、自業自得と言うやつだ。
故にさしあたって気にもしない。

儂は長い年月故に屈折した物の見方であり、興味というモノをあまり持たない。
だが宿主は違う。

幼い…無邪気…知的探求心が多い。
何というか正反対…対極の存在だ。
勿論儂の興味のないこの豊穣を願う祭にも参加したいと思っている。

仮装する祭だった。
妖怪お化け…どんなものにでも仮装して参加する祭。
暗がり…真夜中まで続く祭。

ならばナルトにも参加するコトは出来ると儂は、深いヤツの奥からそう思って声をかけた。

「そんなに出たいのなら祭に参加すればよかろう」

「な…何言ってるんだってばよ」

「夜中なら誰も文句無いだろう?その姿でなければの話だがな」

ニヤリと笑うその笑顔にナルトは、何とも言い難い顔をした。
それもそうだろう、つい最近知った儂のコト…訝しんでも快くは思うはずもない。
第一、儂がナルトに話しかけてくるなどと…思うわけもない。

それでも儂は、何故だか今宵の豊穣の祭にこの小僧ともいえる小さな宿主に見せてやりたかった。

「それにお主は変化の術が得意だろ。悪戯小僧」

小僧であるナルトのプライドを燻らせる様に、そう言葉を紡いでやる。
すると、予想通りにナルトはピクリと反応を示した。

「そりゃー得意だけどさ」

「ならば今宵の祭に出るがよかろう」

「結構チャクラ消費するんだって。楽しんでる内に解けたらヤバイってば」

顔を顰めて言うナルトに、儂はこう言った。

「今日だけ無償でチャクラをくれてやる。だがな」

「何だってばよ?」

「心の底から楽しみ。楽しさとやらを儂に教えてみるコトが条件だな」

そう言えばナルトは、心底可笑しそう笑って…自信満々の笑みを浮かべた。

「何だよ滅茶苦茶簡単じゃん。お安いごようだってば」

言い切るナルトに私はチャクラを貸を貸した。

その御陰か定かでは無いが子供は心底嬉しそうに、豊穣の祭を楽しんでだ。

永遠とも呼べる長い時間…幾度と無く宿主を変えた。

(その間こんなにも身近に感じ…手を貸してしまうとは…儂も落ちたモノか…)

人の生は短く儚いが…案外馬鹿に出来ないものしれぬ。
短いが故に濃い人生…。
ナルトにとって忘れられない一夜だろう…。
だがソレと同時に私にとってもこの日は忘れられぬ一夜と言っても良いのかも知れない。

願わくばこの一夜が自身に永久に刻まれることを願う。

例え…違う宿主が現れたとしても…。


おわし

2005.11.15.From:koumi Sunohara


★後書き+言い訳★
ハロウィンの5題ナルト小話。
散文です…。
2005.10.30.〜web拍手で掲載していたモノです。
兎も角楽しめたなら幸いです。


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