6、花言葉 |
−持つ意味と…願うこと− |
(後編)
父親に言われて、何となく店番がてらナルトが来るかと見張っていると…。
案の定というか、ナルトはウチの店にやって来た。
(来た…言ったとおりだわ)
父親の言った言葉通りの結果に、驚きながら私は気づかれないようにそーっとナルトへ近づく私。
彼奴の見ていたのは、フリージアの鉢植え。
花言葉はかなり前向きで、見ているナルトにピッタリ。
色々な花を嬉しそうに眺めながら、ナルトは忙しなく目を動かしている。
(サクラの言った通り本当に花が好きなんだ〜)
ぼんやりと思うのは、サクラが言っていた私にとっては意外な思い。
声をかけずに、黙って眺めるつもりだったのだけど…あまりにも彼奴が楽しげに花を見ているモノだから…思わず声をかけたしまった。
「フリージアよ。その鉢」
「へ?」
「気に入ったんならあげるわよ常連なんでしょ」
「確かに此処には来るけど…えっとコレ…」
「だから…その花の名前はフリージア…花言葉は“未来への期待”発展途上のアンタにはピッタリでしょ」
してやったりと言った顔で、ナルトを見ればかなり不思議そうにボンヤリとフリージアを眺めていた。
「俺にピッタリ?」
「そうよ、サスケ君のようにはじめから優秀じゃないアンタは…これからが勝負でしょ。がんばり次第でどうにでもなるってことよ」
きょとんとした表情で私を見る彼奴は、何だか不思議なモノを見たような様子だった。
何で私がそんな事をするのか分からないと言った様子…まぁ私自身も何で何だか未だに謎なんだけどね。
「サスケばかが何でまた、俺にそんな花をくれるんだってば?まぁ花育てるの好きだから嬉しいけど」
眉を寄せて、意味が分からないと言い足そうなナルトの声に私は小さな溜め息を吐いた。
(つったく…サクラやヒナタの名前は覚えてるくせに…何で私だけ“サスケ君馬鹿”って呼ぶのかしら…イヤになるわ)
どうでも良い事の筈なのに、少しだけサクラにムカツキを抱きながら…私は言葉を紡いだ。
「あのね…サスケばかって言うのが名前じゃないんです。山中いのっていう立派で可愛い名前があるのよ。それにナルトだって自分の名前を呼ばれなかったら嫌でしょ。他人にして嫌なことはするなって、イルカ先生やサクラから聞かなかったの?」
畳み掛けるように言葉を紡ぐ私に、ナルトはビックリしたのか大きな目を更に大きく見開いた。まぁ言っている内に、結局ナルトの知りたかった花をあげた意味は言っていないのはご愛嬌だろう。
ともあれ、私は言葉を一気にまくし立てたのである。
しばらく私の言葉を理解しようと、目をパチクリしていたナルトは私に渡されたフリージアの鉢を抱えながら嬉しそうな笑顔を見せた。
「いのってば…実は良いヤツなんだってばね。流石サクラちゃんの親友だってば」
新しい楽しいことを発見した子供のような表情で言うナルトに対して(何でサクラだけが“ちゃん”付け何だか…)なんてぼんやり思いつつ私は言葉を紡ぐ。
「そう思うのなら山中花店を贔屓にしなさいよ」
「そんなんで良いってば?」
「ウチの店が“そんなの”ですって?」
「俺花が好きだから、大歓迎だし…おっちゃんも良い人だってば。だから…そんなんで良いって意味だってばよ」
「まぁ…そう言う意味なら怒らないけど。そうね…花好きが多くいる方が良いに決まってるから…それで良いのよ」
そう言ってやるとナルトは益々嬉しそうな顔をした。何というか此方まで嬉しくなるような顔だった。
「じゃお安いご用だって。それじゃ〜このフリージアの鉢有り難く貰っていくてばねいの」
大事そうに鉢を胸に抱き、ナルトはそう言い残して店を後にした。
その様子は本当に花が好きで…私の言った言葉が嬉しかったのだと一目見ても分かるような感じで私まで嬉しい気分になった。
「悔しいけどアンタの言うとおりねサクラ」
たった短い彼との会話で、そんな思いを抱く自分の意志の弱さに苦笑しながら…私はナルトの去った店内で、思わずそんな言葉を零した。
どうか願わくば…彼にあげた花の意味の様に
そんな風に私がナルトに対しての期待から送った事は、そっと私の胸だけに留めておこうと思う。
END
2005.9.13. From:Koumi Sunohara
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