| 真夏日のそんな一日 |
| −悪戯心もうずき出す?− |
澄み渡る空の青。
ジリジリと皮膚に当たる太陽光線は熱い。
そんな日でも、我が病院は来る当てもない患者を待ちながら運営していた。
蝉の声が鳴り響き、嗚呼夏だと思うよりも…きっと人は「五月蠅い啼くな蝉〜」っと茹だる暑さの中で思う人が多々居るはずだ。
現に俺の目の前で、ソファーにしなだれている金髪の男コト藤村成樹…。
兎も角ヤツは、気怠そうに…団扇で風を送りながらそんな風に過ごしていた。
まぁその気持も分からなくは無い。
第一毎日の平均の気温は三十度をゆうに越え、人間の平均体温とさほど変わらないという気温をこの夏はたたき出しているのだから。
まぁ…元々此方の地方は元々温暖な気候であり、暑さには割と慣れては居る(北海道の人間よりわ…と言うことだが…)が、暑いものは暑い。
それは譲歩してそうだとしても、藤村のだらけップリは目に余る気もしないでも無い。
俺はそんな藤村に、気が付いたら言葉をかけていた。
「暑いのは分かるが、だらけすぎでは無いのか?」
俺の言葉に、藤村はナマケモノとたいを張れそうな動きでゆっくりと言葉を紡ぐ。
実際ナマケモノが動いているように俺は見えたのだが…。
「だって暑いしな…うだるんやもん」
だらしくなく腕をダラリと伸ばし、首だけ此方に向けて藤村は言う。
その言葉に俺は眉を寄せる。
「確かに暑いが…確か藤村は、関西方面の出だろ。暑いのには馴れているはずでは無いのか?」
俺は素朴な疑問を藤村に告げるが、ヤツは少し唸った後面倒くさそうに言葉を紡いできた。
「まぁ…そうやけどな。何せコッチ側の人間として生活してんのが長いから…身体が関東体質になったのかもしれへんな。よく言うやん…北の地方からの人間も数年したら関東関西の寒さを寒いって感じるようになるって話しみたいなもんや」
「確かに北の人間の話は聞くが…とは言っても、関西と関東はどちらも暑いと思うが」
俺は藤村の言葉に少し考えながら言葉を返す。
「そんな事言ってもな不破先生。かちわり氷も」
「かちわり?嗚呼…甲子園球場で売っている、袋に氷の入った飲み物か」
藤村の言葉に頭の中で、思い当たるキーワードを探り出し言葉を紡げば、疲れた笑顔ながら藤村は懐かしげに言葉を紡ぐ。
「そや。こんな暑い日はかちわり氷とギンギンに冷えた冷やし飴で乗り切るのが夏の相場やで」
何処か遠い目で言う藤村に、俺は…「かき氷でも良いだろう」と言いながら、年代物の手動のかき氷機を示したが。
藤村は不服そうに顔を歪ませる。
「だってな…電動じゃ無いやん…かき氷機。益々暑くなるしな…面倒くさいしな…無理や」
「それは、お前が…電動では無い年代物を何処から持ってきたからであろう」
黒電話の時同様に、俺は藤村に呆れ口調にそう言うのだが…藤村の言葉もあの時の反復の様に言葉を返す。
「そう言ったってな…あの時はこんなに暑くなるなんて…思わないやん。何せ異常気象なんやし…去年は涼しかったやん。嗚呼、かちわり氷に冷やし飴…恋しいわ」
「では関西に帰るか?」
そう尋ねれば、藤村は盛大に顔を顰める。
「あかんやろ…不破先生。関西なんて…此処と比べられへんくらいの暑さや…そんな所に行ったら」
そこで一旦言葉を止めて、藤村は「干からびるわ」とウンザリした顔でそう言った。
なので俺は…。
「ならば、かちわり氷は諦める事だな…無論冷やし飴もな」
「せやかて…生き甲斐が無いとこない暑い日乗り切れへんやん…そう思わへんの?」
「確かにな…だかが…もうすぐ風祭と水野が西瓜やら冷たい食べ物を持ってやって来るのだ、お前と違って俺には生き甲斐とやらが有るので分からないな」
俺が発したその言葉に、藤村は鳩が豆鉄砲を喰らった様な表情になる。
そして…。
「ホンマ人悪いわ不破先生。まぁ…ポチ達が、冷たい差し入れ持ってきてくれるんわ助かるけどな…。そう言う事やったら俺も少しは頑張れそうかもしれんわ」
藤村苦情を聞き流しながら、俺はこっそり心の中で思う。
(少しこんな意地悪でもして楽しみを作らねば…暑さでだれる…致し方ないだろう)
珍しくそんな事を思う自分に俺は、(こんなに暑いから、そんな考えが浮かんだのだろうな)と暑さの所為にしながら…もうすぐ来るであろう水野と風祭をナマケモノ化した藤村と共に待っ事にしたのだった。
(救援物資はもう目の前だな)
などと想いながら。
おわし
2004.10.27. From:Koumi Sunohara
★後書き+言い訳★ |
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