降って湧いた不幸



「三上…キャプテン命令だ、ちょっと“ココ”に行って来い」
武蔵森キャプテン渋沢克郎が、司令塔三上亮に言い放ったお言葉である。
「何だよ、突然」
無論、突然のお言葉に抗議する、三上。
「何も言うな三上…、コレは監督命令でもあるんだ…」
諦めてくれ、と言わんばかりの口調に三上は、顔をしかめる。
「と言うことだから、“コレ”住所」
渋沢は、紙切れを三上に渡すと、その場を迅速に立ち去る。
無論文句を言われるのを、避けるために。
「何んだ?」
三上は、疑問符を浮かべながら歩き始める。
“監督の命令”に、渋しと。


「ココか…」
三上は、建物を見て呟く。
(しかし、何で俺が…診療場なんかに…)
そう、ココは診療場。
しかも、外科である。
(別に、俺何処も怪我してね〜けど)
心の中でそう思いつつ、診療場の扉を開ける。
「だれか、いねーのか?」
面倒くさそうに、三上は声を出した。
(監督の命令じゃなければ、こんな処に好きこのんで来るかてーの、面倒くせ〜)
ガチャ。
診療場の奥ドアが、開く音が聞こえる。
「なんや?不破先生、客きとるで〜」
シゲは、三上を見つけ呟く。
三上は、小粋な関西弁に少し眉を持ち上げる。
(関西弁…まさか?)
聞き覚えのある、関西弁に三上は困惑の色を強めた。
ココは、桜上水エリア。
嫌な考えが、三上の中で沸き上がる。
(まさか…)
その予想は、的中することになる。
「おっ?お前さん、武蔵森の三上やないか♪」
面白そうに、シゲは三上を見た。
「お前は…桜上水の…」
ムカツキ度全開の気持ちを、押し殺しながら三上は、シゲを見る。
(渋沢め…知ってたな!!!!)
「ま〜な、お前さんも、可哀想なやちゃな〜」
シゲは、全然可哀想に思っていない、声音で三上に言った。
「何が、誰が…可哀想だって?」
デビルスマイルで、三上も切り返す。
「だから、“お前さん”」
シゲも、デビルスマイルのような笑みを浮かべる。
額に青筋を、浮かべる三上。
逆に、楽しそうなシゲ。
ガチャ。
「シゲ…患者が、来たのではなっかたのか?」
不破が、診療室のドアから覗き込む。
三上は、益々不機嫌になっていく。
(ココ何なんだ?何で、桜上水サッカー部の奴らばかり…)
理解不能の、事ばかりの三上。
「貴様が、今日の患者だな。話は武蔵森監督から聞いている。」
不破は、三上を見つけるとそう言った。
「患者にそんな、対応で良いのかよ!先生さんよ〜?」
嫌みたっぷりに、三上が不破に言うが効果無し。
「患者に、言われる筋合いは、無い」
サラリと言ってのける、不破先生。
(ちっ…嫌みも効きやしね〜)
内心毒づく三上。
流石の、三上も唖然。
「ふん、まあ良い。それでは、診察を始めよう」
不破は、有無も言わず三上を診療所に引きずり込んだ。
(患者に対する、扱いじゃね〜よこれ…)
「生きて、帰ってこいよ〜」
シゲは、楽しそうに見送った。

三上は、この後地獄を見ることになった。
不破による、考察タイムが延々と語られ、悪夢のような尋問が続いた。
「水野に対して、何故敵意を向ける?」
「水野もお前に、敵意を向けているのは何故だ?」
「水野が…水野…(以下省略)」
三上が嫌っている、水野ネタばかりが続いた。
大方、息子と司令塔の不仲の理由が知りたい監督からの、お願いによってこうなったようだ。
(水野、水野て、何なんだ〜)
脳味噌の血管が、切れるんじゃないか?というぐらい、三上は不快感でいっぱいだった。
「だから、水野の全部が気に入らね〜んだよ」
「?何故だ、全部とは何処までを指す?」
何度言っても、不破は新たな疑問を出した来る。
水掛け論。
たった、これだけの話題で良く話が続くモノである。
流石、クラッシャー我らが不破先生だ。
「同じ、ポジションだからだろ」
疲れきった、三上の一言。
「成る程…」
やっと、納得した不破。
(もっと、早く言えば良かった〜ぜ)
グッタリと、うなだれている三上。
議論すること(不破一方的の)5時間、外はもう真っ暗。
そのせいで、よけい脱力感を憶える三上。
ちなみにこんな、三上を見たら、藤代が見ていたら驚くだろう。
(畜生!何なんだよ〜、何で俺がこんな目に遭わなきゃならね〜んだよ!(-_-#))
不破の診察もとい、尋問&拷問に流石の指令塔様も、おかんむりのご様子。
まー、間宮のトカゲの拷問にくらべれば、大した事が無いのかも、しれないけれど。
ストレス、ピークの三上。
(帰ったら、藤代でストレス発散決定だな!て…藤代)
三上は、何か思いついたのか、“にゃり”と笑った。
「そういや〜、ココって予約やってるよな〜」
デビルスマイルで、不破に尋ねる三上。
「ああ、やっているが」
「イヤ、ちょっと気になってな(絶対!藤代を連れてきてやる(^^))」
うって変わって楽しそうな、三上。
「そうか…」
不破は、差ほど気にとめてないようだ。
シゲは、少し複雑な顔を浮かべている。
(新たな、犠牲者が出るんやろ〜な〜(^_^;))
何となく、さっしがついたのだろう…。
「その内、予約いれるから…楽しみにしてろよ!」
そう言い切ると、三上は診療所のドアを開けた。
(これで、アイツも地獄を見るんだな>^_^<愉快でたまらん)
転んでもただで起きない男で、あった。
その所為で、後日藤代が地獄を見るのは、また別の話。

三上が、帰って後の診療場では…。
「はははは、また新しい犠牲者が、出るんやな〜。不破先生は、退屈せんでええな〜(^^;)」
苦笑混じりに、シゲは不破に言う。
「退屈は、しないが“犠牲者”と言うのは納得がいかないのだが?」
「気にせんといて〜な、言葉のアヤみたいなもんやって」
(ほんま、気付いてへんのやな〜質悪いわ〜)
シゲが、大きくため息をついた。
次の犠牲者であろう“藤代誠二”を哀れに思いながら。
そして今日も、診療所の夜はふけるのであった。


Fin

★後書きと言う名の、言い訳★
『病院に、来ませんか?』の続きというか、
藤代君が、行く羽目になった原因編です。
何だかコレ、シリーズ化しそうだな〜。
不破先生て、書いていて楽しいから(笑)
ドリームにも、したいですもん♪(ボケ)


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