ここは、とある診療所。
病院らしからぬ、コーヒーの臭いが漂っている。
でも、安心してもらいたい。
いくら、コーヒーの香しい香りが、漂っていようとも、“ここは”病院である事には、変わらない。
「なー、不破先生たまには、コーヒー以外の物とか、飲んだらどうや?」
金髪の関西弁を話す人物コト『シゲ』、が、不破に声をかける。
「佐藤、毎度ながら暇しているのだな…。それに、そのコーヒー俺が飲んでいたものではないか?」
不破は、振り向きもぜず、に答えたた。
シゲは、飲みかけのコーヒーかたてに、苦笑い。
「はははは。嫌やわ〜、不破先生、軽いジョークやないか♪」
無理やり話をごまかすシゲ。
「別にかまわんが、邪魔するなら…さっさと帰れ」
何時もの事なので、不破は平然と言いはなつ。
少し、つまらなそうな表情をうかべるシゲ。
「ハイハイ。外で大人しゅう、寝とりから、安心しぃ」
シゲは、手を“ヒラヒラ”させて、診察室を後にした。
不破は、重い腰を上げて窓をみやる。
「さて、面倒だか仕方がない、仕事するとするか…」
本当に面倒くさそうに、カルテを持つ。
今日の予約患者は1件しかない。
(まー、患者1人だけだから、暇になるだろうがな…)
読みかけの、ぶ厚い哲学書を横目に、みやりふと思う不破である。
(今日中にでも、読み終えるつもりだからな…)
さて、この診療所は少し、風変わりで、有名な診療所であった。
その1として、医者は、不破大地ただ一人。
(※ちなみに、シゲは、暇つぶしに手伝いに来ているだけです)
しかも彼は、中学2年生。
その2は、中学生とは思えない腕の良さ。
その3クラッシャーとゆう異名を持っている事。
この3っが、風変わりの所以であろう。
まー、特に“その3”の影響が大きいのだか…。
それは、追々分かる事なので、取り合えず置いて置く事に、しょう。
だから、近所の住民も緊急事態以外に、訪れるものは、いない。
風祭と水野は、不破を迎えにこの診療所に足を向けていた。
「不破君、きっと忘れてるよね…」
苦笑混じりに呟く風祭に、水野も又苦笑する。
「まぁな〜、だから迎えに来てるんだしな〜」
勝手しったる診療所のドアを、開け中に入る。
「おう!ポチに、タツボンやないか!」
ソファーに転がっていた、シゲが入ってきた2人に声をかける。
「シゲさん、今日和」
礼儀正しく挨拶する、風祭に笑顔でかえすシゲ。
それにくらべ、水野は挨拶なしに目的のコトを尋ねる。
「シゲ、不破は?」
「挨拶なしに、不躾やな〜タツボンは…」
苦笑を浮かべながら、さほど気にした様子ではないシゲ。
「それやったら、診察室におるで!今は、診察中や」
愉快そうに、顔を緩ませるシゲに風祭は、首を捻る。
ううううううう〜。
うなり声の様なモノが、診察室から聞こえてくる。
風祭は、さらに首を傾げる。
そして、“悪いかな?”と思いつつ、診察室のドアに手を伸ばす。
相変わらず、シゲは楽しそうである。
「ふ…不破君。何してるの…?ゝゝゝ」
怯えを含む声で、風祭がドアの隙間から尋ねる。
“そろそろ”と開けたドアの先から、“地獄からのうめき声”のようなものが聞こえていたからだ。
しかし、肝心の不破の返答は無い。
「風祭どうした?」
固まって動かない風祭に、水野は訝しげに尋ねる。
「ドアの向こうに、不破は、居るんだろ?」
水野は、風祭押すようにして、診察室に入った。
「おい、不破!居るなら返事ぐらい…」
水野もまた、固まる。
風祭に至っては、まだ復活せぬまま。
2人が、見たモノは…。
人参尽くしに囲まれて、壊れかけてる藤代の姿があった。
それは、正に嫌いな人間にしてみれば、【地獄絵図】のようなものであろう。
(例えば→「芋虫だらけの風呂に入れれれる」というものである)
壊れかけてるというのは、語弊があるかもしれない…。
藤代は、意識を半分以上飛ばしているから、壊れていると言った方が正しい。
何で又、藤代がこんな目に遭ったかと言うと。
部活の疲れやら、ゲーセンでの格ゲーのやりすぎのため、溜まりに溜まった疲れを「整骨院でも行って治してこい!」と先輩に言われたので、ここに居る。
その時に、“その先輩”が「俺、良い医者知ってるから、そこに行け!」と何とも言えない、微笑を浮かべていた。
「予約は、もーしてあるから、さっさと行って来い!!」
半ば強引に、背中を押されて、ここに来ている。
そして、現在の藤代の現状にに至っている。
「ふ…藤代君!?」
少し、意識を取り戻した風祭は、慌てて藤代にかけよる。
「はばまぐぐぐ(風祭〜ゝゝゝ)」
人参を、口一杯に詰められているので、声にならない声の藤代。
涙を浮かべて、風祭に必死に訴える。
風祭は、この時何となくこの経過に至までの経緯が読め、溜息をつく。
(「おおかた、バランスの取れた栄養を摂取していないから、その様なことが起こるのだ!それを、改善するには…βカロチンを摂取する必要がある。故に、この人参を食べるが良い!!」
とか、言われてこうなってるだろうな〜)
←※その通りです
なかなか、察しのよい風祭である。
やっと、不破は、自分の客の存在に気づき目を向けた。
「おっ、風祭に水野ではないか?」
「お前、今日おでん食いに行くって言ってただろ?お前が…」
水野は、呆れ口調で不破に告げる。
「ふむ…忘れていた」
“しれっと”言ってのける。
その言葉に、毎度ながら疲れを感じる水野。
「では、行くとするか…」
鞄に財布を入れる不破。
それに、安堵の表情を見せるのが、風祭と藤代。
(不破君が、殺人者にならなくて良かったよ〜)←おいおい、将さんそいつは、言い過ぎです。
(俺、俺助かった〜?神様有り難う!!)←誠二さん壊れちゃってゝゝゝ
不破が、想い出したように、藤代を見やる。
(えっ…まさか、まだ終わってないのか〜?)
「しかし、まだ診察が終わってなかったな…」
“さーどうしたものだろか?”と、口元に手を持っていき考索モード。
3人は、”げっ”と不破を見た。
「まーま、もー良いだろ、それより早く行くぞ!!」
やけぱち、に水野が不破の腕を取って引っ張る。
「そうだよ、おやっさんも、待ってるよ!!」
普段の当社比1,5倍の、風祭スマイル(?)を浮かべ、反対の腕を引っ張る風祭。
「しかし…」
2人に引っ張られても尚、悩み続ける不破。
その様子を、必死に笑いを堪えて、見ているシゲ。
(このまま、見とっても楽しいんやけど、しゃーないな)
ドアの隙間から、黙って傍観者と洒落こんでいたシゲがヤレヤレと助け船を出した。
「まーま不破先生、今日はこの位で堪忍してやれや」
その声に、不破は嫌そうな顔をする。
「堪忍とは、どうゆうコトだ佐藤?」
「別に、ご想像にお任せってヤツや♪気にすること、あらへん♪♪」
不破は、訝しげにシゲを見る。
シゲは、いつものことなので気にしない。
ただ、少し苦笑を浮かべているが…。
「まー、後は俺が責任もって、患者さんをお返ししとくよって」
シゲは、目で水野に不破を連れって行くように、目配せをする。
「ほれ、タツボン、ポチ、早よ〜不破先生連れていけや〜」
水野と風祭は、不破を外に促す。
“後ろ髪ひかれる想い”なのか、人参地獄の藤代を見る不破。
「戸締まりをしなくては、ならん…」
(せっかく、面白い研究材料が…)
半ば、引きずられている不破がささやかな抵抗のように呟く。
「えーって、えーって、俺しとくから」
シゲは、“気にするな”と言わんばかりに、手を振る。
疑いの眼差しをシゲに、向ける不破。
「仕方があるまい…では、戸締まりを頼んだぞ!」
そう言い残すと、また不破は引きずられて、病室を後にした。
“はいはい”と、不破の居なくなった方に手を振るシゲ。
「良かったな〜、あのままやったら、それが無くなるまで…食わされていたで〜」
同情と言うよりは、愉快で堪らないと言った表情でシゲは、藤代を見た。
藤代は、首をブンブンふる。
(そんなことになったら、俺マジで死んでたかも…)
「まー、助かって良かったやないか!人生色々や♪」
“バシバシ”と藤代の肩を叩き、明後日の方向を見るシゲ。
藤代は、ここを紹介した先輩に怒りを憶えつつ…“もう2度と来るものか!!!”と心に誓ったのである。
ちなみに、藤代をここに紹介したのは…他でもない“彼人”である。
“彼人”の話は、また違う機会が有れば、紹介したいと思う。
「ねー水野君、不破君が“精神科の先生”じゃなくて、良かったよね…」
心底そう思うのか、風祭は小声で水野に尋ねた。
「ああ…自殺者がでそうだもんな」
笑いを、噛み殺しながら水野は答える。
2人は、顔を見合わせて笑う。
「おい、何コソコソと話してるんだ?早く行くのではないのか?」
少し眉を寄せて、不破がもの申す。
「「ゴメン、ゴメン…じゃ行こうか!!」」
「ああ」
不破は、短く答える。
3人は、闇の中に消えていった。
おわし
2001.4.3 from:koumi sunohara