ガラスの靴

ママがよく、読んでくれた物語。
女の子は一度は夢見る物語。
『シンデレラ』
よく言われるの、「ミミちゃんはシンデレラ好きでしょ」て。
そんな時、私は曖昧に笑うの。
確かにシンデレラは好き。
でもね、だって私は…。
‘ガラスの靴’を持って現れる、王子様を待つなんて嫌なんだもん!!
私はそんな、消極的なお姫様何かじゃないもの。

「丈先輩V来ちゃいました」

「ミ…ミミ君〜?」

裏返った声の出した丈先輩は持っていた参考書を床に落しちゃた。
私は参考書を拾い、丈先輩に手渡す。

「そんなに驚かなくても、良いでしょ〜!私が来ちゃ迷惑だったの〜?」

わざと怒った態度をとる私。

(久々に会うんだから、少しぐらい我侭したって良いわよねv)

「め、迷惑だなんて、嬉しいよ。でもアメリカ居るはずじゃ…?」

「会いにきたの!!」

私は丈先輩の言葉を遮る。

「え?」

やぱり間の抜けた声で、丈先輩は返事を返す。

(も〜!相変わらずマイペースなんだから!!)

「私は、丈先輩に会いたくて仕方がないから、会いにきたの!!」

「ミミ君…」

丈先輩は何も言ってくれなかった。
それどころか、少し困った顔をしている。

(喜んでくれると思ったのに…)

「やっぱり、迷惑だったんだ!!」

私は泣きそうになるのを、堪えて声を荒げた。

「もー、いいよ!!」

気がついたら、丈先輩の返事も聞かず走り去ろうとしていた。
急に体が動かなくなったコトに顔をしかめてしまう。

「ミミ君!」

呼び止められたのとほぼ同時、丈先輩の手は、私の手首を掴んでいる。
声を失ったまま振り返る。
丈先輩の真剣な顔が私の目に飛び込んだ。

「あのねミミ君、僕は君が来たことが、迷惑なんて思ってないよ」

声音はあくまで、優しいもの。

「じゃ〜ぁ何で、困った顔してたのよ〜!!」

丈先輩に勢いよく詰め寄る。

「ミミ君それはね、えーっと」

煮え切らない調子に戻った丈先輩に、また怒りが湧いてくるのを、‘ぐっ’と堪える私。
すると…。

「丈さん、探してた例の物見つけましたよ…て、ミミさん〜!!」

「光子朗君ー!!」

光子朗君は私を見るなり、半分悲鳴に近い声を出した。

(何よ、図書室で大きな声出しちゃってさ、しかも私を化け物か何かみたいに、悲鳴あげなくても良いじゃないのよ!!)

私は”むっ”とした。

「光子朗君、例の物て何よ!丈先輩に何を渡すつもり(>_<)」

思わず光子朗君の首を、締めんばかりに掴みかかる。

「ぐ…苦しいです…ミミさん」

「丈先輩に何を渡すてーの!!」

ゴゴゴゴゴゴゴ〜ォ。
背後から背筋が凍る、冷気が流れてきた。
ドス。
私は、後ろから来た物体に、飛ばされよろめく。

「ミミさん…光子朗さんに何してるんですか?」

普段よりも声音が低いヒカリちゃんが、不動明王をバックに私の前に現れる。
無論、目は笑ってない。
ちなみに、私を追いやった物体は…ヒカリちゃんによって突き飛ばされた、ヤマトさんだった。

「ミミ君、大丈夫かい?」

「丈先輩〜」

私はここぞとばかりに、丈先輩に抱きつこうとしたが…。
ペチン。
突然私の額に、丈先輩の指が軽く当る。

「心配してくれるのは、嬉しいけどね。光子朗やヒカリ君を、困らすのは駄目だよ」

少し厳しい顔をする。
そして、また柔らかい笑顔で私を見る。

「本当はね、突然送って驚かそうと思っていたんだけど…」

先程、光子朗君が持っていた大きな箱を、私に差し出した。

「開けて良いんですか?」

おずおずと聞く私。
頷く丈先輩。
カサカサカサ。

「これ…これって、私の帽子?」

そこには、私がデジタルワールドで無くしたはずの、帽子が収まっていた。

「あはははは、ビックリしただろ?」

「もー最高v」

そう言うと丈先輩に、おもいっきり抱きつく。

「ミ…ミミ君〜////」

「ふふふ、丈先輩、大〜好きv」

照れてる丈先輩。

「あのね、もう1つお願いがあるの…」

「へ?ナンダイ?」
                                              

帰りの飛行機の中。
私は夢の中にいた。
夢の中では、シンデレラが待ち構えていた。

「ミミちゃん、どうだった?」

「勿論、上手くいったわよv」

得意げにシンデレラに、告げる。

「ほーらね、ただだまって待っていることより、良いことが有ったじゃない!」

さらに私は、先程丈先輩からおねだりした、眼鏡を掲げて見せる。
するとシンデレラは最初目を丸くして、次にとびきりの笑顔をして「貴方って、世界一強くて幸せなお姫様だね」て言わせてやったのよ。
だから、浮気しないでね…丈先輩。


Fin

2000.12.3 From:Koumi Sunohara
<後書き>
ミミちゃんと言えば姫!姫と言えばシンデレラVVと言う事でシンデレラ関連な話をどうしても書きたかったのです。
丈ミミなはずが、やはりミミ丈気味…^_^;別に良いんですけど。
丈先輩がミミちゃんには凄く甘そうだから、一生無理かも(私の中の丈は)…。しかし、何時か書きたいです。


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