あの空の下で




君の居る世界へ

君の居るあの空の下へ

どうかもう1度、連れていって

解けない答え



現在光子郎の胸中はこの言葉で埋め尽くされていた。
”この想いは何だろうか?”声には出さない呟きが表情に出ている。

知りたがり病が作動中の彼は自宅のパソコンに向かっていた。
普段彼は、パソコンがあれば楽しくて仕方がないという人種なのだが、今日は何だか楽しめないでいる。一言で片付けるとしたら”心ここに在らず”といたところだろうか。

不機嫌の原因は彼の好きで堪らないパソコンの中に在る。
嫌、正しくはパソコンの中(それすらも、正しいとも言えないが)のデジタルワールドに…。

そこに、光子郎の想い人がデジタルワールドの平和の為に戦っているためであろう。

彼女八神ヒカリは微笑みを浮かべてそう言ってデジタルワールドに向かった。
 
今光子郎に出きる事は現在の選ばれし子供を見守りサポートすること。


「僕は何て無力なんでしょうか…」


不意に呟く光子郎の言葉に休憩に来ていたテントモンが疑問符を浮かべ佇んでいる。


(光子郎はんは、何を言ってはるんやろうか?)


テントモンは、光子郎の言葉の意図を掴めずにいた。
テントモン的には(光子郎はんが無力やて?何言われはります?このお方は)と思うのだが口には出さづ光子郎の次の言葉を待つ。
すると光子郎の表情が自嘲気味に歪んだ。


「僕て役たたづですよね、そう思いませんかテントモン」


昔テントモンが出会って間もない頃、よく見た暗い表情。
テントモンは首(首らしき部分)を傾げる。


(今の光子郎はんに、そんな暗い表情する理由が見あたらあらへんわ)


光子郎を知ってるからこそ不思議に思う。


「光子郎はん、わてにはどないなことで悩んでいるか判りまへんけど、そないな風に思うんやったら行動してみたら、ええんやないいですか?」


テントモンは遠まわしに”無力だと決めるのは、後で良い”と言っていた。


「テントモン…」


(どうして君は、僕の欲しい言葉を言ってくれるんでしょうね)


光子朗はふとそんなことを思う。
自嘲気味の暗い闇はそこにはもうない。


「動かないと何も始まらない!!そうでしたよね太一さん」


突然光子郎が呟くと、パソコンに向かい始める。
その様子をテントモンが満足そうに見つめる。


(それでこそ光子郎はんですわ)





―デジタルワールドにて―

ピピピピピピ。
伊織のDターミナルにメール受信の知らせが届く。


(光子郎さんから?どうしったんでしょうか)


『Dear伊織君 至急1人で戻って来て下さい From泉光子郎』


(大変です、急いで戻らないと…)


「アルマジモン!!1度戻りますよ!!」


「なした〜伊織〜?」


「良いから早く」


伊織はアルマジモンを半ば引きずりながら、デジタルワールドを後にした。


「光子郎さん、どうかしたんですか?」


伊織は光子郎の家に出てくるなり開口1番にその言葉を口にした。
かなり息が上がっている、どうやら走ってきたらしい。


「いえ気になることがありまして…」


少し暗い影を落した様な声音。


(光子郎はん…腹黒くなられはって)


テントモンは2人の会話を黙って聞いていた。


「それでは、早く皆の所に行かなくては」


伊織は言うなり光子郎とテントモンを掴むとデジタルワールドに凄い勢いで入っていった。




タケルはキョロキョロと辺りを見渡す。


「あれ?伊織君居ないね」


その言葉に京子がタケルの方を見る。


「あらら、本当に居ない〜、でも別にアルマジモン居るから平気じゃないの〜」


その時…。
ドドドドドドドドドド。
凄い勢いで、光子郎と伊織を乗せたデイグモンがタケル達の前に現れた。


「あれ?光子郎さんどうしたんですか〜?」


タケルは意味ありげな笑顔を向ける。
一方京子は満面な笑顔で向かえた。


「泉先輩〜、どうしたんですか?突然来て」


光子朗は曖昧に笑うと、目当ての人物を探した。


(来る前に大輔君の所にメールを入れておいたから、近くまで来てくださってると思うのですが…)


「光子郎はん!!太一はん達が来はりましたで〜」


ピク。
光子郎はテントモンの言う方向を見つめる。


(ヒカリさん)


ヒカリの姿を見つけた光子ろうは、その方向に走り出そうとした。
が…その行動は、伊織と京子に阻止されてしまった。


「泉先輩〜、このプログラムなんですけど…」


「光子郎さん、お腹へてませんか?」


等と光子郎を離そうとしなかったのである。


(この2人を邪見するわけにもいきませんし)


光子郎はタケルの方を見たが、タケルはただ意地悪な微笑みを浮かべているだけ。


(ヤレヤレ、タケル君は虫の居所が悪いようですね)


途方に暮れながらもテントモンの方に目線を送る。


(光子郎はんが、困ってはりますな〜、ほなわてが)


「伊織はん、京子はんえろーすんまへんけど」


「何」「何ですか?」


京子と伊織はテントモンに振り返る。


「プチサンダ―!!」


「「ウゲー」」


京子と伊織の悲鳴が上がるとほぼ同じに、救いの手はやって来た。


「光子郎さん、早く乗ってください!!」


「大輔君!それにライドラモン!!」


「早く!」


大輔とライドラモンに促されるまま光子朗はライドラモンに飛び乗った。


「タケルの奴〜、光子郎さんを助けないいなんて!許せね〜!!」


「まーまー、彼も色々虫の居所が悪かったんですよ」


「そうですかね〜、ヒカリちゃんはあそこに居ますから」


大輔は満面の笑顔で光子郎を送り出した。


「有難う御座います」


光子郎は一礼すると足早にヒカリの所に向かった。



「ヒカリさ〜ん!!」


息を切らしながら光子郎がヒカリの元にやって来た。
先程まで般若の様な顔が嘘の様にヒカリはそんな光子郎を見つけるや否や満面な笑顔で出迎えた。


「ヒカリさん、あの…僕って役に立ってますか?」


その言葉にヒカリは首をかしげる。


「何言ってるんですか?」


「僕は貴方達の足手まといなのかと…」


「違います!!私、私は…」


ヒカリは堪らなくなって言葉が途切れてしまう。
光子朗はヒカリを黙って見つめる。
拳を強く握り、ヒカリが顔を上げて、言葉を紡ぎ出す。


「私は、光子郎さんが居てくれて何度も助かってるです!役に立たないなんて有るわけないじゃないですか!」


「でも、僕は…」


光子郎の煮え切らない態度にヒカリは顔をしかめる。


(どうして判ってくれないの?貴方は私の支えなのに)


悲しげに曇るヒカリの顔。


「光子郎!貴方、全然判ってないでしょう!!」


パートナーの悲しげな表情に耐えられなかったテールモンが突然話に割り込んだ。
光子郎は突然の事に目を白黒させる。


「戦うだけが、役に立つわけじゃないでしょう!誰かが支えてくれるから、頑張れるじゃない!!」


「テールモン…」


ヒカリはテルーモンを抱き上げ、ギュウと抱きしめた。
そんな2人を光子郎は複雑な思いでみつめる。


(僕の存在…?)


「僕はココに居て良いんですか?」


燻っていた思いを呟く。
答えはすぐに返ってくる。


「当たり前です!!」


「そうですか、有難う御座います」


何時もの光子郎の表情に戻っていた。


「さて、戻りましょうか?」


「はい」


―その日の夜―


「光子郎はん、そう言えば今日の事解決したんでっか?」


「まー、解決しましたよ」


「ほんなら良いですけど〜」


テントモンは、そう言いながら光子郎の右頬を凝視する。


(ヒカリはんにでも、殴られはったんやろうか?)


最後まで疑問符だらけな、テントモンであった。


(さて、明日からもっと頑張らないといけませんね)


一方光子朗は、少し腫れた右頬に触れながら微笑を浮かべていた。


余談であるが、光子朗の右頬はヒカリを悲しませた事に怒り狂った太一の仕業であったとか…。


おわし


2000.12.3 From:Koumi Sunohara



<後書き>
光ヒカを頑張って書こう!!と思いながら書いたのに、何だか旧選ばれし子供達のもどかしさ…みたいになったり、ならなかったり。
良く分らないことになってしまいました(+0+)
一応、これの大輔サイドの話何ぞ有りますので、読んでくださると有難いです。
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