−泣き出しそうな空と君−




「何も知らないのが罪だ」と…何処かの偉い人が言った。

「知らないから誰かを傷つけて良い訳じゃ無い」と…そういった。

それは当然であり、自身でもそう思う。
だけれど私は知り得る事が出来なかった。

知り得ようとすることが罪。
弁論の自由も…知る事への自由の束縛。
私の居る世界は、そんな小さな箱庭。

それでも私は勉強が好きだったし…知らないことを知りたいという…知的探求心も人一倍。
まぁ…それだけが取り柄だったからというのもあるかも知れない。

学校での私は、優等生で…ガリ勉。
卒業しても…知識ばかりの頭でっかちで…ナルトやサスケ君の足を引っ張っていた。
だけど、二人はそんな事を気にしないで…私の知識を凄いと言ってくれた。

だからこそ、知りたいと強く願う事がある。
仲間のこと…その抱える重たい宿命。
私なんかでは、支えることや…肩代わりする事は出来ないだろうけれど…知りたいと思う。

何故…サスケ君があれほどまでに力に固執して…

何故…ナルトに対して里の人間が冷たいのか?

どちらも分かりそうで、分かりにくい。
まるで霧の中に迷い込んだような気分。

それに…一生懸命修行しても、強くなった気がしないし…知識を詰め込んでも…身になったのかも最近分からない。
一種の伸び悩み期間なのかもしれない…だから余計に不安は募る。
まるで、降り出したいのに降り出せない…雨の気配を含んだ空のよう。


溜め息知らず知らず、師匠の前で吐くという失態をしてしまった。
我ながららしくない…。

「なんだいサクラ不景気な顔をして。美人が台無しだよ」

「師匠…」

「ん?雨降りそうでセンチメンタルかい?それとも雨が好きでないか?」

「好きとはいいえないです…。だってもの悲しくなりますから」

「そうだね…雨はもの悲しい…。だけどね…雨は永遠に降り続ける訳では無いよ」

そう言って師匠であり、五代目火影綱手様は優しい手で私を撫でてくれた。
無力すぎる自分がイヤで…少しでも、頑張っているナルトに追いつきたくて…復讐の為に木の葉を抜けたサスケ君を連れ戻したくて…だけどやっぱり無力な自分に悔しいと思う。
そんな私の胸中を知ってか知らずか、師匠は言葉を紡ぎ出す。

「昔に比べれば今のナルトは幸せだと思うよ。それにだ…うちはの坊主だって、誰が何と言おうとも…幸せなヤツだ」

言い終えて、窓の外を見る師匠の横顔はとても深い感情を浮かべていた。

「悲しいのは誰にも思われない事。それは、願って手に入るもんじゃない…人と人の繋がりが…信頼を得てこそ生まれるんだ。孤独で…忌み嫌われて…誰にも思われない人間だって世の中には居るんだ…だから彼奴らは思ってくれるお前が居る分幸せなんだよ」

呟くように言うその言葉は、無性に泣きたくなるほど…有り難い言葉で…私はなんと答えて良いか反応に困ってしまった。
それでも師匠は、気にせず言葉を続けた。

「時間が無いのも分かるけどね。だからといってサクラが焦っても良い方向に進まないよ。雨は冷たく悲しいモノかもしれないけど…恵みももたらす。優しい雨だってあるんだ…だったらお前はその優しい雨が彼奴らに降るように、祈ってやるんだね」

その言葉がストンと胸に落ちた。
つっかえていた小骨が落ちるように、師匠の言葉は私の抱えていたどうしようもない自分に元気を与えた。

力はまだ無いし…知識も足りない。
だけど…自分に出来る事があると言ってくれる師匠に、私は「はい。そうですよね」とやっと笑顔で返すことが出来たのだ。


そして私は願う。


何時か私の大事な人達の…冷たい雨が…優しい天の恵みに変わることを祈って。

今日も私は空を見上げ、彼らの無事を祈るのだ。

何処までも続く澄み切る青空に…。



おわし


2005.8.13. From:Koumi Sunohara


★後書き+言い訳★
雨音5のお題より、NARUTO小話。
サクラと綱手師匠のお話です。
何というか…師弟関係好きの人間心を擽る二人だと思います。
と言うか私がこの師弟コンビが好きだというのが強いのだと思います。
ちなみにweb拍手にて2005.7.1.に掲載していてたモノです。
兎も角楽しんで頂けたら幸いです。

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