最近、コンビニを始め、スーパー等のお菓子コーナから、“ある”商品が消えるという現象が武蔵森近辺で、起きている。
その商品というのは、『チョコエック日本のペット』。何のことはない、数百円のチョコレートの中に動物の人形が入っている物である(動物の作りが、精巧だとかで、世の大人達もはまっている者も多い)。
ちなみに、『日本の動物』バージョンも有るが、そちらに至っては“消える”という事態まで、発展してはいない。
何故か、『ペット』バージョンでけなのである。
寮を完備している学校がある、立地条件だからと言えばそれまでだが…。
理由は、それだけでは無い。
買い占めをしている者が居るとまで、噂までたっているのだ。
ココは、武蔵森中等部。
「ふふふふふ…」
マムシ事、間宮茂は、紙袋を抱えて部室に向かっていた。
とても機嫌が良いのか、顔が緩んでいる。
口からは、不気味…失礼、笑い声が漏れている。
意気揚々と、部室のドアを開ける。
「おっ、間宮どうしんだ?機嫌良いようだが」
武蔵森守護神でキャプテンこと、渋沢克郎が入ってきた間宮に尋ねる。
「アンドレ…」
渋沢の問いにも、答えずに間宮は謎な言葉を呟く。
ちなみに、微笑んでいる。渋沢は、苦笑しながら間宮の持っている紙袋に目を向ける。
(うん?あれは…)
【チョコエック】の箱がちらりと、顔を覗かせていた。
「間宮も、チョコエックにはまっているのか?」
「アンドレが、入っているとう情報があったから」
渋沢に目を向けずに、作業しながら答える間宮。
(アンドレ?そんなの居たかな?)
首を傾げる渋沢。
ガサガサ。
箱を一心不乱に開け、チョコエックを割りドンドンカプセルを取り出す間宮。
あっという間に、チョコの山がテーブルの上に築きあげられた。
「凄い量だな…1人で食べきれるのか?間宮」
少し呆れを含む口調で聞く渋沢。
「食べものは、粗末にしない…」
チョコを割りながら、横を指さす間宮。
「藤代…」
「ぬわ?ふぁんすか、ひゃぷてん(う?何すか、キャプテン)」
チョコの山を、片っ端から食べている藤代が居た。
「成る程…しかし、“日本の動物編”ばかり買って、よっぽど欲しい物があるんだな〜」
感心しながら、渋沢は箱をまじまじと見た。
間宮の顔が強張った。
「キャプテン…今なんていった?」
「“日本の動物編”を沢山買って…」
少し驚きながら、素直に答える渋沢。
間宮は、驚愕の表情になった。
「何と言うことだ、アンドレ〜」
部室内に、間宮の悲痛な叫びが響き渡った。
「間宮…?」
その姿に、流石の守護神渋沢も、焦る。
「もしかして、“日本のペット編”と間違って買ったのか?」
ボソリと、間宮は呟くと、一目散に部室を後にした。
「間宮…」
後に残された渋沢が、唖然と立っていた。
「おい、渋沢」
「ああ、三上」
呼ばれて、振り返ると…。
三上が、カプセルの人形を組み立ていた。
「三上…何やってるんだ?」
「あ?組み立てしてんだよ。暇だったら、お前も手伝え」
「ああ」
2人は、黙々と組み立てるのであった。
ちなみコレが、2日前。
渋沢と三上が、人形の組立が習慣化したある日のこと。
「アンドレー…」
完成した人形の山を見つめ、間宮が溜め息混じりに呟いた。
「無い…アンドレが居ない」
恨めしそうに、人形の山を見る。
三上が、呆れ顔で間宮を見る。
「お前さ〜、何が不服な訳?プレミヤ物の『盲導犬』の白と黒とか、奇跡的に出てきた『ツチノコ』出しておいて、贅沢なんじゃね〜の?」
「ツチノコは、良いが他は…はずれだ」
「じゃー貰って、良いんだ」
三上は、目を光らせて間宮に尋ねる。
間宮は、興味なさそうに人形の山を渡す。
「チョコも、持っていってくれ」
チョコの入った、袋の山も渡す。凄く嫌そうに、顔をしかめるを三上。
(此奴俺が、甘いの嫌いなの知って、やってんのか?)
「いらね〜よ」
無論即答。
「じゃーやらないぞ」
間宮の衝撃の一言に、こめかみをヒクつかせる三上。
(俺に、甘い物を押しつけるとは…)
しぶしぶ、チョコを受け取った。レア物への、魅力には勝てなかったらしい。
(ちっ…藤代にでも、押しつけるか)
と心に思いながら。
「三上先輩何、持ってるんです?」
笠井が部室から、人形の山を抱えた三上に尋ねた。
「笠井か、良いタイミング来たな」
三上は、デビルスマイルを浮かべながら笠井を見る。
(俺…迂闊だったかも…)
内心、厄介な事を押しつけられたら、どうしょう?とドキドキの笠井。
「人形運ぶの手伝え!」
しかし、三上から出た言葉は、あまりにも普通な事に、やや驚く笠井。
「こんなに人形沢山、どうする気です?」
人形を運ぶの手伝いながら笠井は、三上に疑問を投げかけた。
「俺が、飾って…部屋に置いておくと、思うのか笠井?」
「それは、ありえませんね」
サラリと即答する笠井。
「だろ〜。金だよ金!」
(でしょうね)
顔には出さずに、心の中で呆れる笠井。
「レア物以外だったら、欲しい物持っていって良いぞ」
ホクホク顔の三上である。
笠井は、有り難く“魚たち”をゲットしたのである。
なかなか、作りが良いので実は笠井も集めていたのである。
間宮の探しているアンドレは、彼のこよなく愛するトカゲである。
正式名は【ヒョウモントカゲモドキ】(色は、ハイイエロー)爬虫類の中では、ペットとして養殖に成功した数少ないトカゲ。
普通のヤモリと異なり「まぶた」がある。(間宮ノートより)
間宮自身も、アンドレを飼育しているのだ。
その愛すべき、アンドレが、ちまたで流行っている“チョコエック”に入っていれば、コレは買わずにはいられないだろう。
「アンドレ待っていろ!今すぐ迎えに行くからな」
満面の笑顔を浮かべ、間宮はコンビニに走って行ったのである。
これが、間宮が“チョコエック”を買い占めるいきさっである。
今日も、愛すべきアンドレの為に、チョコを買い占めに行く間宮。
間宮がチョコを買い続けること、もう1週間が経っている。流石の藤代も、チョコレートの味に飽きたのか、チョコエックはビール袋に入れ冷蔵庫行きとなっている。
「何故だ?何故でてきてくれない、アンドレ〜」
部室で、間宮は悲痛な叫びをあげていた。
((アンドレ…?))
渋沢と笠井は、首を傾げる。
「アンドレなんて、モノ有ったか?」
「いえ、見ませんでしたよ」
小声で、会話する2人。
「彼奴の欲しいモノなんて、分かり切ってるだろ…アンドレは、愛称だよ」
溜息まじりに、三上がノートパソコンをいじりながら、間宮の変わりに答えた。
「まさか…」
「そう、渋沢お前の嫌いな、爬虫類」
サラリと言ってのける三上。
渋沢の顔色が、みるみる悪くなっていく。
「え…でも、わざわざ“日本のペット”買わなくたって良い気しますけど…」
笠井が、分かりかねると唸る。
「よっぽど、欲しいじゃね〜の?俺の知っちゃことじゃ、ね〜」
「まっ、その御陰で俺は良いおもい、してるけどな…。おっ、盲導犬に10万ついた」
パソコンのオークションに、夢中の三上。
「ま〜俺も、欲しい魚が手に入りましたけど…」
「あんだけ、買って出ないのはいかがなものだろう?」
復活した渋沢が呟く。
「そうだな、こんなに“レア”が出るのにな」
三上は、エックチョコのレアと言われている、『盲導犬の白、黒のゴールデンレトリバー』の山を見て苦笑した。
「彼奴にしてみりゃ〜、レアもはずれなんだけどな」
極度の買い占めの為、店からブラックリストに載った間宮。
その為、チョコエックが手に入らなかった。
チョコエックが間宮の手に入らなくなった、ある日。
間宮の元に、以外な人物が訪問して来た。
風祭と山川である。
「何か用か?」
間宮が、面倒くさげに風祭に尋ねる。
風祭は、笑顔で「間宮君、トカゲ好きだったよね」と言う。
「ああ」
短く答える間宮。
「よかった」
風祭は、ホットした表情で間宮を見る。
「なっ将、言った通りだったろ」
山川は、笑顔で将を見る。
「うん、合ってたね」
と頷く風祭。
「そうそう、それでね。よかったら、コレ要るかな?」
風祭の手の中には、間宮が探し求めていたトカゲの姿があった。
「アンドレ!!」
ひし〜っ。
探し求めていた、恋人に会ったごとく…間宮は、トカゲの人形を大事そうに受け取った。
「どうかな?」
「貰って良いのだな?良いんだな!返せていっても、返さないぞ!」
「そんなに、念押さなくても…」
風祭と山川が、苦笑する。
「そのトカゲだって、欲しい人の所に居た方が幸せだろうし」
風祭は、ニッコリと笑う。
「お前ら…良い奴らだな」
少し涙ぐむ、間宮。
よぽっど嬉しいようだ。
「さーアンドレ、家に帰ろう」間宮は、アンドレを連れて寮の方に消えて行った。
「間宮君、嬉そうだったね」
「そうだね」
風祭と山川は、幸せそうに消えていった、間宮の背中を見送った。
こうして、無事間宮の元にアンドレがやって来た。
しかし、皆様お忘れかもしれないが、このチョコエックには、小さく『第1段』と書いたある。
間宮のトカゲ騒動が起きるのは、遠い未来では、無いかもしれない。
END
2001.5.13 FROM:Koumi sunohara
☆後書きと言う名の言い訳☆
いかがでしたか?間宮駄文第一弾!(と言うことは…第2弾が…)
実際、間宮君ならばやりそうかな?と思って書きました。
友達の神楽ちゃんの、アドバイスを貰って書きました。
だから、トカゲの名前は『アンドレ』。
でも、間宮君の話してる所が、少ない気が…(汗)
チョコエックペットバージョンは、私もちなみに買いました。
私の場合は、トカゲちゃんが2回も出ましたけどね(笑)
間宮君にあげたい〜!むしろ、受け取れ(俺様モード)1匹は、貰ってもらたけどね。
取り合えず、飾っています。
ちなみに、コレの番外編みたいので、不破先生を交えて書きたいと、野望に燃えております。
こんな、駄文におつき合いいただき感謝です。